2020 Fiscal Year Research-status Report
芥川龍之介の直筆資料所蔵に関する調査と分析、総合データベースの構築及び活用の研究
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19K00298
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
庄司 達也 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 教授 (60275998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥野 久美子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (50378494)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / 芥川龍之介 / 直筆資料 / データベース / 文学館 / 原稿 / 書簡 / 修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の当初計画の第1の事業としては、「芥川龍之介直筆資料所蔵状況データベース」(仮題)の基盤部分の構築と、それを行うための全国にある文学館、資料館などへの調査(アンケート、実地踏査を含む)を行う事を据えていた。しかしながら、新型コロナウィルスの感染状況の悪化に伴い、当初予定からの抜本的な変更を余儀なくされた。そのため、データベース構築については、既存の情報(『芥川龍之介全集』(岩波書店)、『芥川龍之介全作品事典』(勉誠出版))を踏まえ、基盤となる部分の作業を学生アルバイトを雇用して行った。 また、2本目の柱としては、福島県郡山市が所蔵する「久米正雄旧蔵映像フィルム」の修復事業の実現と云う事を掲げた。年度当初の4月に、研究代表者の庄司達也が所属する横浜市立大学と郡山市との間で研究協力に関する協定を締結し、修復事業の計画の基礎的部分を構築し、修復計画の実施のための環境を整えた。その後、協定に基づいて「修復可能性調査」を実施し、その結果を踏まえ、比較的に状態の良かった2本のフィルム資料を選び、パイロット調査として位置付け、(株)ヨコシネディーアイエーに業務委託する形で修復作業を施した。この作業で得た映像の分析とそれに関わる調査を行い、3月末に報告書を整えて郡山市に提出し、成果を共有した。2021年度の早い時期にパイロット調査の成果を公開する事を、3月の時点で確認している。 上記の他にも、「3研究グループ合同公開勉強会」を7月と3月に他の2つの研究グループと共同で開催し、それぞれのグループの研究成果を公開する事を行った。この企画は、新型コロナウィルスの感染状況の悪化から、オンラインシステム(Zoom)を使用して行った。この事により、このような状況ではあったが、多くの参加者を得る事ができ、中には海外からの参加者もあったことを付記しておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題にとって2年目の2020年度は、「芥川龍之介直筆資料所蔵状況データベース」(仮題)構築の基盤となる基本データの入力作業が、新型コロナ感染の拡大の影響を受けた事で、当初の計画通りに進める事が叶わなかった。しかしながら、データベースの基盤となる部分は取り敢えずの形ではあるが整える事ができたので、先ずはその事を1つの成果として位置づけておきたい。 また、福島県郡山市との協働で進める「久米正雄旧蔵映像フィルム」の修復事業は、当初の予定の通りに実施した「修復可能性調査」の結果を踏まえた事で、計画を前倒しして一部の資料の修復作業を行う事となった。その結果、近代文学研究にとどまらない、郷土研究、風俗研究に於ける貴重な資料ともない得る映像を確認することができた。本研究課題にとって、この成果は大きなものである。 一方、他の研究グループと合同で行った2度の「3研究グループ合同公開勉強会」では、Zoomを使用しての開催でありながらも多くの参加者を得る事ができた。参加者の中に海外からの研究者を得られた事は、オンラインシステムを利用しての開催であったからだと考えている。このような機会を利用しての研究成果の公開も、十分な実績として良いと考える処である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの全国に於ける感染拡大の状況を受け当初の計画より遅れている全国各地の文学館、資料館などに於ける芥川龍之介直筆資料の所蔵状況調査を、積極的に実施してゆく。そこで得られる情報が本研究課題での構築を目指す「芥川龍之介直筆資料所蔵状況データベース」(仮題)の記載情報として反映されるのだが、現時点に於いてはデータベースの骨格となる基本的な情報の整理と一応の入力作業(当初予定の第1段階)を終えた処であるため、今後の作業では、実際に使用されるデータベースの構築を目指す中で、項目や記載方法、さらには情報そのものの精度も上げる工夫も探り、斯界に於いてより望まれる形のデータベースの作成を目指したい。 2020年度に飛躍的に進展させることができた福島県郡山市所蔵「久米正雄旧蔵映像フィルム」の修復事業について、先ずはその成果の公開を予定している。また、同市との協働により、斯界のみならず、広く社会へとその成果を発信し、還元してゆく事を進める。 なお、今年度は、郡山市との協働の成果を踏まえて行われる神奈川県藤沢市藤沢文書館と、同館所蔵の芥川龍之介関連資料の修復事業に関する協議を再開し、一定数の資料の修復作業を早期に実現することを目指している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の状況を受けて、年度当初の時点で大幅に研究計画を見直した。その結果、会合、並びに調査に関わる旅費の支出が「0円」となった。この事が、「次年度使用額」が生じた最も大きな理由である。また、次年度は、藤沢市文書館との芥川龍之介関連資料の修復計画を協議する事になっている。その費用を「次年度使用額」と翌年度分として請求する助成金により執行する計画を立てている。なお、2020年度に進めた「芥川龍之介直筆所蔵情報データベース」の作成を2021年度も引き続きアルバイト学生を雇用して進める計画を立てており、その費用も前述の助成金より執行する。
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Remarks |
庄司達也「大阪毎日新聞社と菊池寛、芥川龍之介」(3研究グループ合同 第2回公開勉強会 2021年1月31日での個人発表)、庄司達也「芥川龍之介の書簡 「文壇」という大海へ 青年作家の夢と野望」(『三和新聞』691号 2021年3月10日)、庄司達也「田端に「芥川龍之介記念館(仮称)」建設へ」(『日本古書通信』1092号 2020年7月)
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Research Products
(3 results)