2020 Fiscal Year Research-status Report
Reorganization of the Critical History of Medieval Japanese Poetry: Reception and Transformation of Fujiwara Teika's Poetics.
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19K00305
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
渡邉 裕美子 立正大学, 文学部, 教授 (30713078)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 藤原定家 / 歌論 / 毎月抄 / 偽書 / 書簡体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、藤原定家著とされてきた『毎月抄』の成立時期を見極め、『毎月抄』の後代への影響の実態を明らかにし、歌論の史的展開上に位置づけることを目的とする。まずは、『毎月抄』の伝本調査が不可欠なため、2019年度は主に地方の図書館などに所蔵される伝本調査を行なった。2020年度は、引き続き未調査の『毎月抄』の伝本調査や、関係する『右記』や『長綱百首』の伝本調査を行なう予定であったが、COVIT-19のパンデミックにより、まったく調査することができなかった。 しかし、2019年度に調査を終えた伝本のうち8本を選んで校本を作成し、公刊することができた。『毎月抄』の校本は約40年前に1度作成されたまま、見直しがなされていない。また、1996年に冷泉家時雨亭文庫本『毎月抄』が影印刊行されて以降は、諸伝本中での位置づけが明らかにされないまま無批判に本文として用いられる状況が続いていた。しかし、拙論では、冷泉家時雨亭文庫本よりも書写年代が古く良質な本文を持つ伝本を紹介するなど、そうした現状に一石を投じることができたと思う。 これと併行して、『毎月抄』成立の時代につながる、院政期の和歌史の問題を取り上げる論考も発表した。さらに、『毎月抄』中に見える「霊夢」記載の意味を探るべく、古代中世における「夢」について研究を行った。 また、2019年度中に研究発表に応募して採択されていた、ヨーロッパ日本研究協会(EAJS)の国際会議が、2020年開催から1年延期になった上に、開催形式がオンラインに変更になったため、それに対応するため発表内容の見直しを進め、2021年8月の発表に備えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度に引き続いて行なう予定だった『毎月抄』の伝本調査や、関連する『右記』や『長綱百首』の伝本調査をまったくできなかったことが、当初の予定ををやや遅らせている。予定を変更して、期間後半に行うつもりだった、広い視点から和歌史・歌論史を捉え直す研究を先に行なおうとしたが、伝本調査を前提にしている部分もあるため、遅れをカバーできないところがあった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も少なくとも前半は伝本調査はできないと思われるため、『毎月抄』の歌論の内容的な研究を進めたい。特に『毎月抄』の影響を受けいると考えられる他の歌論書との関係についての考察を深めたい。また、2021年8月には、EAJSの交際会議のオンライン開催があるため、その発表に向けて研究内容を整理して準備に努めたい。
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Causes of Carryover |
2020年9月にはベルギーに渡航してEAJSの国際会議に参加して発表予定、2021年3月にはカナダに渡航して、ブリティッシュ・コロンビア大学で研究集会に参加予定であったが、いずれもcovid-19パンデミックにより渡航自体が中止になった。また、国内各地に所蔵される伝本調査がまったくできなかった。今年度も引き続き海外渡航は難しいと予測されるが、日本国内の調査が可能になれば、調査を再開したい。また、国際会議がオンライン開催になり、国内学会もオンライン開催が中心であるため、パソコンや周辺機器を充実させて、オンライン学会にスムーズに対応できるよう努めたい。広く研究対象に関係する参考文献を収集することも継続するつもりである。
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Research Products
(2 results)