2022 Fiscal Year Research-status Report
中世日本における祈願と救済の境界的宗教空間に関する総合的研究
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19K00319
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿部 美香 名古屋大学, 人文学研究科, 共同研究員 (10449093)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 六道釈 / 安居院唱導 / 二十五三昧会 / 聖衆来迎寺本六道絵 / ハーバード美術館南無仏太子像 |
Outline of Annual Research Achievements |
①中世日本に形成された境界的宗教空間を探究する本研究の対象として、最も中心的な仏教の世界観である六道をめぐる六道絵と、その儀礼であり唱導の言説である六道釈(六道講式)の研究は、前年度の仏教文学会シンポジウムでの発表からさらに検討を重ね、重要資料の翻刻紹介を行うとともに、二十五三昧の儀礼空間全体に問い直した。その結果、二十五三昧会の法会儀礼が、叡山横川から山上の無動寺を介し、洛東の青蓮院に慈円により継承、発展する経緯が指摘でき、聖衆来迎寺本六道絵の宗教空間が浮かびあがることとなった。 ②境界的宗教空間を創り出す担い手として、継続的な研究を進める宣陽門院の儀礼空間の研究は、東寺御影堂で営まれた光明真言講に着目するに至り、美術史研究者(早稲田大学・山本聡美教授)と共同し、『光明真言功徳絵詞』の調査を行った。 また、名古屋大学CHTがハーバード大学阿部龍一教授、メリッサ・マコーミック教授、ハーバード美術館レイチェル・サンダーズ氏と共同で重ねてきたハーバード美術館所蔵南無仏太子像の像内納入品の研究に参画し、調査報告書を中央公論美術出版会から刊行することができた。像内納入品の分析を通して、本尊の造立と関わった尼僧たちの信仰実践の諸相が照らし出され、今後の研究に有用な視座を得ることができた。ハーバード大学では、ハーバード美術館蔵『因果業鏡図』について、資料集を作成しワークショップにて報告を行うこともできた。 ③富士山を中心とする東国の海と山の神仏のコスモロジーは、コロンビア大学での国際的な研究連携のもとで資料集を作成し報告を行うとともに、基礎となる前田尊経閣文庫本『走湯山縁起』について翻刻紹介を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究を通して、国宝聖衆来迎寺本六道絵の儀礼空間や、東国の宗教空間の探究に関する基盤研究の成果を、国内外の研究連携のもとで積み重ね、基礎となる資料紹介とともに報告、刊行することが出来たことは、大きな進展である。また、地域に伝来した聖教や絵巻、神像調査の機会を得て、あらたな研究遂行のための土台となる資料集の作成や論点を見出すこともできた意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
二十五三昧の儀礼研究を、『光明真言功徳絵詞』や他の境界的儀礼空間を創出する儀礼研究に広げ、重要史料は翻刻紹介を行う。その上で見出されるあらたな課題や基盤研究の成果を、国内外の研究連携のもとでさらに進展させる。その成果は、国内外のワークショップや論文、書籍として刊行することを目指す。
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Causes of Carryover |
感染症対応のために国内外での調査研究の機会が十分に持てなかった。これについて、ベルギー・ゲントで予定されるEAJS大会に参加し、共同でワークショップを企画して使用する計画である。
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Research Products
(11 results)