2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Naka Kansuke's Works during and Post World War Two.
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19K00329
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
大森 英実 (木内英実) 東京都市大学, 人間科学部, 准教授 (70331501)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本近現代文学 / ウイーン大学 / フンボルト大学 / ベルリン国立図書館 / ベルリン日独センター図書館 / 中勘助 / 戦争詩 / 第二次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書「研究実施計画」記載「(4)国外における森鴎外・石川啄木 ・中勘助に関連したジャパノロジー研究調査」を実施した。拙著『神仏に抱かれた作家 中勘助』所蔵ベルリン国立図書館及びフンボルト大学森鴎外記念館を中心にヨーロッパの大学図書館・国立図書館日本文学関連書所蔵調査を2019年ウイーン大学(7月26日)、森鴎外記念館(7月29日)、ベルリン国立図書館・ベルリン日独センター図書館(7月30日)で実施した。ウイーン大学東アジア学科日本学室では啄木研究者で著名な同大学元教授Dr.Ruth Linhart氏、同大学教授Dr.Ina Hein氏の協力を得、同大学助手で林芙美子研究者であるAdam Greguis氏、同大学助手で東北地域雑誌研究に取り組むTamara Kamerer氏とオーストリア・ドイツにおける日本近代文学研究の現状について情報交換を行った。その際、ヨーロッパにおける日本学研究会であるEAJS:the European Association for Japanese Studiesへの入会を勧められ、帰国後3年間入会することとした。また、フンボルト大学森鴎外記念館においては副館長兼キュレーターのBeate Wonde氏と面会し、同氏より森鴎外のドイツにおける研究状況について知見を得た。ベルリン国立図書館では東アジア部日本課主任研究員Dr.Ursula Flache氏から同図書館の近代日本文学関係資料収集方針等について説明を聞き文献学が重要視される方針を確認した。ベルリン日独センター図書館では中勘助作品の日本語及び英文図書の所蔵を確認し、中勘助「銀の匙」所蔵及び現地ドイツ人利用の理由について司書から話を聞くことができた。 以上の海外出張により得た知見を基に2020年2月25日駒沢女子大学日本文化研究所において学術交流予定であったが、コロナ禍により延期となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中勘助直筆資料の調査を目的とした静岡市中勘助文学記念館への出張は2019年度は3回に留まったが、研究補助員が同行した3回目に中勘助直筆資料スキャン作業が大幅にはかどった。同研究補助員が情報処理能力を駆使した結果、今までスキャン済みの中勘助直筆資料データベース化することができ、その成果コピー(USBメモリ保存)を2020年1月に静岡市に提供することができた。 またCOVID-19流行前に計画通りに海外出張に出掛け、新たな知見を得ることができた。本研究発表の場としてEAJS:the European Association for Japanese Studiesに関する情報を現地で得、帰国後入会し2020年8月ベルギーゲント大学における研究大会発表申し込みを英文予稿を添えて行ったことも意味深い(残念なことに今年度研究大会はコロナ禍により中止となった)。 国内における研究発表に関し、2020年2月25日駒沢女子大学日本文化研究所において中勘助文学における死生観をテーマに学術交流予定であったが、コロナ禍により2020年度に延期となった。しかし基礎資料の作成を通して、中勘助が日中戦争期に創作した戦争詩と 静岡疎開中の太平洋戦争期に創作した短歌・俳句との作風の対比が明らかとなり、同じ短詩系文学であっても中国戦線における兵士を中心とした人事から自分が居住する静岡周囲の自然へと中勘助の創作テーマが変遷したことを確認することができた。2020年度の論文発表の原アイデアを練ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の状況に鑑み2020年度は①静岡市中勘助文学記念館所蔵中勘助直筆資料(戦争詩関係)調査②中勘助以外のヒューマニズムの詩人・文学者による日中戦争及び第二次世界大戦時の創作活動調査③中勘助以外のヒューマニズムの詩人・文学者研究者との学術交流を中心に研究に取り組む予定である。国内外の学会・研究大会が軒並み中止もしくは延期となる中、研究成果発表は地味ながらも国内所属学会研究誌への論文投稿を中心にせざるを得ない状況である。緊急事態宣言解除後の静岡市の意向を確認しながら中勘助直筆資料のスキャン作業を可能な限り推進したい。 オンライン授業の普及によりZoom等のアプリを用いた遠隔講演にも慣れた現状下、昨年度延期となった駒沢女子大学日本文化研究所における学術交流会等、開催の目途が立った研究成果発表の機会を最大限利用し、新たな知見を得る予定である。 本来は2020年度に予定していた拙著『神仏に抱かれた作家 中勘助』所蔵英国オックスフォード大学ボドリアン図書館への出張について、世界的なCOVID-19の状況を確認しながら最終年(2021年)度に実施を延期する予定である。2019年度のドイツ出張成果に鑑み、事前にオックスフォード大学ボドリアン図書館WEB-OPACを利用し同図書館における日本語資料の検索を行いブリティッシュカウンシルから大学図書館資料収集方針の情報を得る等2020年度に日本国内で可能な基礎調査を進め、段取りよく2021年度に英国での現地調査に取り組みたいと希望する。
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Causes of Carryover |
理由の1点目として物品費に関し予定では研究室で印刷した中勘助直筆資料のスキャン画像に関し書類収蔵文具を購入し分類保存を考えていたが、分類保存が可能となった2020年2月COVID-19の感染拡大に伴い大学研究室で研究室機会が失われ、書類収蔵文具の購入が不可能であったことが挙げられる。 理由の2点目として、中勘助直筆資料スキャンの為の静岡市中勘助文学記念館への出張回数が当初の予定回数よりも少なかったことが挙げられる。特に2020年2月期及び3月期の出張がCOVID-19の感染拡大に伴い静岡市より中勘助文学記念館における調査許可が下りなかったことが要因となっている。
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Research Products
(2 results)