2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Naka Kansuke's Works during and Post World War Two.
Project/Area Number |
19K00329
|
Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
大森 英実 (木内英実) 東京都市大学, 人間科学部, 准教授 (70331501)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 中勘助 / 児童文学 / 人間社会批判 / 雷の太鼓とチャルメラ / ひばりの話 / 教科書 / パーリ語古訓話 / 印度哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度執筆「戦前・戦中の教科書教材としての中勘助作品の位置づけ」『東京都市大学人間科学部紀要』第12号(2021年3月)と関連し、中学1年生以上の対象学年の国語教科書に中勘助作品が掲載されてきた結果として、①中勘助の戦後の児童文学作品がどのような書籍に掲載されたか、②それらの作品はどのようなテーマか、③それらの作品は教科書教材とどのような関連があるのか、という3本の柱に沿って調査を行った。 ①について児童文学全集を網羅的に調査した結果、中勘助文学研究初の試みとして戦後の「児童文学全集掲載中勘助文学作品一覧」を完成させた。中勘助自身が明らかに小学生を読者対象に意識して執筆した作品「ひばりの話」(1946年)と「雷の太鼓とチャルメラ」に絞って調査した結果、②について、それらの2作のテーマは大人を対象にした小説と同様の人間社会への批判であった。更に、初出未詳作品「雷の太鼓とチャルメラ」について初出誌が『三年の学習』1954年8月号(学習研究社)であることが判明した。③について、「雷の太鼓とチャルメラ」初出誌に顕著であったが挿絵、漢字への振り仮名、読解を確認するための問いや註等、教科書や教師用指導書における「学習の手引き」に近似した本文や編集上の工夫が見受けられた。 上記の調査結果は「中勘助の戦後の児童文学作品『雷の太鼓とチャルメラ』及び『ひばりの話』に関する考察」『東京都市大学人間科学部紀要』第13号(2022年3月)にまとめた。その後、児童文学作品における人間社会批判というテーマ性に関して戦後の児童文学雑誌で代表作品が日本に紹介されたドイツの児童文学者作品との比較、中勘助戦後初の童謡詩「山がつとはしばみ」(『童話教室』第2巻10号、1948年11月)においてパーリ語古訓話、アメリカ合衆国原著の有名絵本との比較から中勘助の文学の国際性を調査中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス禍における行動制限による中勘助文学記念館をはじめとする文学館、国内外の大学図書館訪問調査が2021年度は依然難しく資料調査が滞った。 しかし、上記【研究実績の概要】に記したとおりに、その間に中勘助の戦後の児童文学を落ち着いて調査した結果、本研究テーマに関わる重要な視点や作品(中勘助作品、海外の作家の作品)を発見することができた。 1年間の研究期間延長を行う中で2022年度の研究の目途がついたことから、2021年度当初は「(4)遅れている(Delayed)」であったが2021年度末には「(3)やや遅れている(Slightly Delayed)」に改善された。 閲覧希望の『南伝大蔵経』か収蔵されている職場(東京都市大学世田谷キャンパス)最寄りの駒澤大学図書館が新型コロナウイルス禍における利用者制限及び建て直しにより2022年10月まで一般(世田谷6大学コンソーシアム利用者を含む)開放されないことから、2022年度前期の資料調査に多大な懸念を抱いている現状である。
|
Strategy for Future Research Activity |
中勘助文学の国際性の基底となる印度哲学と作品との関連については既に「中勘助の仏教童話及び仏教童謡詩におけるJataka等聖典の受容」の題名で発表申し込み済みの2022年9月3日、4日於:東京外国語大学開催の「印度学仏教学会」学術大会にて発表予定である。その結果を踏まえ、2022年10月16日於:東京都市大学夢キャンパス開催予定の東京都市大学人間科学部・世田谷文学館友の会共催公開講座「中勘助の戦争児童文学ー次世代への願いを文学はどのように表現したかー」(仮題)で発表予定である。 新型コロナウイルスの感染状況が終息後には、中勘助作品と比較予定の海外の児童文学作品研究書が少ないのでThe Horn Book Magazineを中心に海外の児童文学書評調査を国際子ども図書館等で行う予定である。 本公開講座の他、成果発表の機会(拙論上梓を含む)を持つ予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍における行動制限や一般利用制限により予定していた静岡市中勘助文学館や国内外の大学図書館での調査が行えなかったことが主な理由である。また中勘助文学の国際性を証明するための海外作家による文学作品の判明が会計執行が不可能な2021年度末の時期に重なったため、新年度会計処理が再開される2022年5月まで研究書籍の購入を見送ったことも理由として挙げられる。 今後の使用計画として①国内外の大学図書館、文学資料館への交通費②海外の文学者の作品購入③報告書作成を見据えた人件費④報告書作成費が挙げられる。 ①に関しては、現在、授業数と学部内役割が多いので長期休暇時期の利用を予定している。②に関しては、現在、既に発注し入手している。③に関しては、今までの調査研究成果(一次資料を含む)の管理をデジタル化する目的で現在、アルバイトを週1日(1日6,7時間)雇用している。報告書作成の書誌データ整理のため、2022年度末に書誌の専門家より助言いただく予定である。④に関しては、2022年度末に原稿量が確定した時点で印刷・出版社に見積もりを発注する予定である。
|
Research Products
(1 results)