2020 Fiscal Year Research-status Report
中世・近世前期における九条家の蔵書の生成とその変遷
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19K00334
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
石澤 一志 鶴見大学, 文学部, 非常勤講師 (30507752)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 九条家旧蔵本 / 法華経要文和歌 / 模写本 / 模刻本 / 短冊 / 振古仙雅 / 眺望集 / 花園院 |
Outline of Annual Research Achievements |
全国各地に散在する、九条家旧蔵古典籍の探索を行った。新型コロナウイルスの感染拡大に鑑み、実地調査に出ることが出来なかったため、主にデータの収集と、巷間に出現した当該研究に関連する可能性のある古典籍を購入し、それらの調査研究を行った。 九条家歴代当主の筆蹟を含む、短冊の模写本を見出し、購入調査を行った。これは、江戸時代後期の短冊蒐集で名高い浦井有国の旧蔵短冊手鑑『振古仙雅』『古今吹万』の透写による模写本であり、古筆鑑定家の古筆了伴が当該短冊手鑑を鑑定し、極め札(鑑定書)を発行した際の手控えとして作成したものであることが判明した。また、それが『振古仙雅』『古今吹万』を中心に作成された、短冊模刻帖『眺望集』の刊行に近接する時期に行われていたことが、模写本の奥書から分かった。よって、この模写本の作成および鑑定が、短冊模刻帖『眺望集』の作成・刊行と密接な関連を持つことが想定されてきた。 また、法華経の要文を題として読まれた和歌を記した懐紙として、花園院の供養に際して行われたことが分かるものが、各所に伝存するが、その新出の原懐紙とそれらを江戸時代に模写した本を見出した。この模写本には、従来知られなかった新出の内容が含まれており、原懐紙と合わせてそれらについて、調査報告を行った。そして、従来の研究を更新・補完することを行った。 また中世王朝物語であるこが明らかになった『雨やどり』の諸本・伝本の調査を行い、研究会主催のシンポジウムのパネリストとして、報告を行った。中世王朝物語の生成圏として、鎌倉時代の九条家および西園寺家の存在が挙げられているが、今後の研究調査の対象として、散文・物語研究の分野を視野に入れてゆく必要があることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
九条家旧蔵本の復元を目指した調査については、大きなまとまりを持つ所蔵先の調査をほぼ終了しており、そのチェックと各地に散在する資料を博捜する調査を継続しており、少しずつではあるが、新たな旧蔵本を見出し得ている。 九条家旧蔵本の内実に関わる、個別の伝本及び作品などについての調査については、それぞれの作品について調査研究を行っている。しかし、調査研究対象の作品の数量・内容が広範にわたるため、十分な進捗を見せているとは言いがたいところがある。特に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、所蔵先に出向いた調査活動が制限されていることもあり、それら以外の研究を漸次行っているが、やや停滞気味であったことは否めない。研究期間の延長を視野に、次年度以降の研究・調査活動の進展を期したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の社会状況もあり、研究期間の延長および継続を視野に入れつつ、現在行っている調査研究に関しては、その纏めに向けた作業を行う予定である。 各地に散在する九条家旧蔵本については、その所在と内容についての一覧をまとめ、公表することを目指す。それにより、さらなる九条家旧蔵本の発見へとつなげていきたい。 個別の作品研究については、昨年度より着手した『千五百番歌合』の調査研究、および歌仙絵を伴う『時代不同歌合』『三十六人歌合』についての研究を継続する。そして、短冊の模写本および模刻本の成立過程の考察を行う。この過程で、九条家関係の歴代関係者、縁戚関係の諸家の筆蹟資料について、調査・研究を行いたい。また、物語研究に於ける、九条家および西園寺家のの文化圏の考究を視野に入れつつ、『雨やどり』を中心とした、中世王朝物語の研究も手がけたい。さらに、近年明らかになってきた、小澤蘆庵を中心に行われた、歌書(私家集・歌合・歌会資料)の書写活動について、禁裏本・御所本との関連に伴い、九条家旧蔵『歌合集』(実践女子大学山岸文庫本・早稲田大学本・慶應義塾大学本)との関係を再度考察する必要が出てきている。これらについての調査・研究を、可能な限り行いたい。
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Causes of Carryover |
今年度使用予定であった、人件費・謝金については新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、大学での作業を継続的に行うことが困難となり、それについての予算を執行することが出来なかった。前述の理由により、日本全国各地への調査に出向くことが出来ず、それに伴って旅費を執行することがなかったことが挙げられる。 次年度に於いては、新型コロナウィルスの感染状況を見極めて、調査地への出張・調査を再開したい。また、人件費・謝金についても、状況を見極めて作業を依頼したい。そして、旅費を伴う調査が困難な場合、それに見合う調査を行うべく各種資料の購入を行い、予算を使用したい。
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Research Products
(1 results)