2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00335
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中西 健治 立命館大学, 文学部, 授業担当講師 (90227835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須藤 圭 筑紫女学園大学, 文学部, 准教授 (70706613)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本古典文学 / 寝覚物語 / 夜の寝覚 / 諸本 / 異文 / 享受 / 注釈 / 源氏物語 |
Outline of Annual Research Achievements |
1, 『寝覚物語』の最重要伝本である前田家本(前田育徳会・尊経閣文庫蔵)の詳細な調査、検討を行った。前田家本は、正確な複製として出版されているものの、この調査によって、大幅な見直しを迫るものではないながらも、少なくはない違いがあることが判明した。さらなる検討はこれからの課題にはなるものの、前田家本の価値を正しく解明するための重要な情報を得ることができた。 2, 同様に『寝覚物語』の伝本のひとつであり、他本と比べて特異な本文の状態を示す狩野文庫本の詳細な調査、検討を行った。狩野文庫本は、マイクロフィルムでの確認のみにとどまっていたものの、実見調査によって、多くの重要な情報を得ることができた。 3, なお、これらの書誌的調査の結果は、次年度以降の公開を予定している。 4, また、諸本の実見調査と並行して、前田家本を底本とした『寝覚物語』校訂本文の作成、および、注釈の執筆を行った。 5, 上記の成果は、一部を切りだし、複数の論文として公開することができた。具体的には、この物語に見られる「物語のついでに」という表現が、「ついで」とはしながらも、大きく展開する物語を引き出す際の、いわば指標のように用いられているのではないかと考えられること、あるいは、男主人公と女主人公のあいだを結ぶ仲介役であった対の君に、「人知れぬ」ということばを語らせることによって、本来は女主人公の拒絶を表現しなければならない場面であるにもかかわらず、恋のかけひきの場面としての風貌をまとっていくことになる物語の方法を指摘し、さらに、これは、『寝覚物語』が『源氏物語』の趣向を読みとることによって獲得した方法であると考えられることなどを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、当初の計画どおりに進めることができた。 具体的には、『寝覚物語』の現存伝本のうち、もっとも重要と思われる前田家本と、特異な本文の状態を示す狩野文庫本の調査を行うことができ、いくつかの成果を挙げることができた。その他、前田家本を底本とした『寝覚物語』校訂本文、および、注釈の作成も、継続的に執筆を進めることができ、その成果を複数の論文として公開することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、現存写本の調査を実施するほか、校訂本文、注釈の執筆を進める。次年度は、特に、実践女子大学や神宮文庫などでの調査を行い、改作本や古筆切の検討も進める計画をしている。これまでと同様、これによって得られた成果は、学術雑誌、もしくは、口頭発表をとおして公表していく計画である。 『寝覚物語』を書誌学的・文献学的な視点から再検討することによって、この物語の研究にいっそうの広がりをもたらしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
3月に予定していた調査が、新型コロナウイルス感染症の影響で中止になったため。新型コロナウイルス感染症の影響を鑑みながら、次年度以降に調査を行う計画である。
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Research Products
(3 results)