2019 Fiscal Year Research-status Report
儀礼における歌掛けの機能的研究―日中間の比較を通して―
Project/Area Number |
19K00336
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
牛 承彪 関西外国語大学, 英語国際学部, 教授 (20460842)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 比較研究 / 歌謡 / 歌掛け / 儀礼 / トン族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究計画に従って、二回の現地調査を実施した。 一回目は2019年8月8日から8月19日までの期間。調査地は中国貴州省の錦屏県平秋鎮・茅坪鎮、および黎平県である。最も大きい成果としては平秋鎮石引村の「看桃源洞」行事を参与観察できたことである。旧暦七月十五日前後はいわゆる「鬼節」であり、祖霊を迎えて祭るのが一般的であるが、石引村では特定の女性が神がかりなって、冥界を訪問し、そこでの見聞を人々に伝えるといった特異な習俗が伴っている。冥界を旅する魂(女性のシャーマン)とこの世の人間(男性)との間に歌掛けが展開されることが注目される。本研究の課題である「儀礼における歌掛けの機能」を考察する上で興味深い事例である。この行事の実態・背景・歌掛けの内容が明らかになるにつれて成果が期待できる。 期間中に同じ習俗があったとされる圭葉・孟伯・皮所などの村を踏査し、聞き取りを行った。錦屏県は古くから林業が盛んな地域であり、稲作とともに生業の主な内容であるが、これまでは「木の文化」についての考察はあまりなされていない。トン族の歌掛け文化とも大きく関わっているので、茅坪鎮の「木排」、黎平県登槓村の木製品加工の実態をめぐって、かつての経験者からお話を聞いた。 二回目は9月5日から9月9日までの期間。調査内容は鹿児島県大島郡龍郷町の「アラセツ」と「八月踊り」である。祭祀儀礼的な行事「ショチョガマ」「平瀬マンカイ」及び娯楽的行事である八月踊りではいずれも歌掛けが交わされ、歌詞の重なりが存在する点において注目すべきである。また神聖性と世俗性という性格から中国少数民族の歌掛けと比較する重要な材料となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)今年度に実施した現地調査はいずれも当初から研究計画に入れてあるが、「看桃源洞」はその性質から実態調査が難しいことが予想された。本研究の重要な調査対象であるこの行事を参与観察することができ、その成果が期待される。 (2)奄美大島の調査では計画通り参与観察が実施できただけではなく、現地でしか入手できない行事の開催情報などを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)これまでの調査成果を整理する。 (2)今後の実地調査は研究計画に従って着実に実施することを目標とする。 (3)コロナウィルスの影響が長引くことを予想し、調査対象をめぐる資料収集(特に歌謡資料)作業を現地の協力者に委託する方法を検討する。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響で計画していた現地調査を取り消しにしたため。次年度の研究調査に使用する。
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