2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Japanese Frontier Poetry Written in Classical Chinese Language from the Late Edo to the Meiji Era
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19K00339
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Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
泊 功 函館工業高等専門学校, 一般系, 教授 (10390379)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 江戸漢詩 / 江戸時代北方警備 / 朝鮮漂流官人李志恒 / 松前僧釈智潤 / 蝦夷地 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度もコロナ禍により、予定されていた資料調査が残されてしまった。ただし、研究計画に記載のある、東北諸藩における蝦夷地警備関係資料調査において、まだ残っていた2つの地域の内、鶴岡の庄内藩における調査は実施できた。残る仙台(藩)他の地域は令和4年度前半に実施し、資料の解読を進めて研究のまとめを完成させる予定である。 公表できた業績としては、「蝦夷漢詩前史-元禄期松前阿吽寺僧釈智潤と朝鮮漂流官人李志恒の詩的交流」(『人文論究』第91号、2022年3月)がある。本論文は幕末期以前の蝦夷地が世界史的なフロンティアになる以前に(フロンティア化以前の元禄期なので「前史」とした)、蝦夷地松前に漂流してたどりついた朝鮮知識人と、現地松前の僧との間に交わされた詩を通して、彼らの辺境意識を探ったものである。使用した主要な史料は日本側は松前藩家老松前広長編纂の『福山秘府』と、朝鮮側史料『漂海録』であり、両者とも漢文史料である。 本研究によって得られた結論は、漂流朝鮮官人には、蝦夷地漂着をアイヌとの出会いなど異文化との接触・摩擦といった特異な経験ととらえる意識はあるものの、命を救った地である蝦夷地を、いわゆる「辺境」という意識でとらえるようなことはなかった。いっぽう松前僧のほうは江戸の出身ということもあり、蝦夷地をすでに国内の辺境の地ととらえる意識があったということである。 それがロシアの領土的野心に基づく侵出によって、蝦夷地がフロンティア化・辺境化してきた19世紀以降、蝦夷を詠んだ詩に辺境意識(地政学的意識)が読み取れるようになってくるというのが私の見立てである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年度だけではないが、本研究費の支援を受け始めて1年もたたないうちにコロナ禍に陥り、これまで資料収集が予定通り進まなかったのが主要な要因である。また、コロナ禍に伴って、勤務校においてもオンライン授業の実施をはじめとして、その他対応すべき業務が多忙となり、十分な研究時間が確保できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は研究期間を延長した最終年度であるので、上半期のうちに残る資料調査を実施し、研究テーマの課題解決に欠かせない資料の収集を完成させる。夏休みなどを利用し、蝦夷漢詩(北方辺塞詩)のリストを作成し、その読解を進めて、蝦夷漢詩資料集を編集し、令和4年度内に刊行する予定である。関連論文についても発表を予定している。 また、社会への研究成果の還元として、10月には函館中央図書館での郷土の歴史講座において、蝦夷漢詩の道南部分での研究成果について市民に講演する予定となっている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、予定されていた資料調査が残されて、資料の収集が予定通り進まなかったため。 使用計画については、先に「今後の研究の推進方策」でも述べたように、コロナ禍により未実施である蝦夷警備にあたった地方藩への資料調査で残された仙台藩の調査、また補足的資料の調査として国立国会図書館、北海道文書館などへの調査旅行で使用する。そして本研究のまとめとしての『蝦夷漢詩資料』(仮称)の自費出版用の経費として支出する予定である。
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Research Products
(1 results)