2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00342
|
Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
土佐 朋子 佛教大学, 文学部, 准教授 (00390427)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 懐風藻 / 勅撰三漢詩集 / 本文系統 |
Outline of Annual Research Achievements |
①これまで行ってきた『懐風藻』本文研究の成果に基づき、『校本懐風藻』を刊行した。榊原忠次旧蔵本(天理大学天理図書館蔵)を底本として、38種類の本文と比較対照し、異同を一覧にした。また、江戸期版本への書入や注釈書などについても必要に応じて参考資料として記載した。「諸本解題」では、研究開始時に存在が明らかにされていた23本のうちの22本に加えて、新たに存在を確認した13本を含めた写本35本と版本4本について、本文の性格や伝来をまとめた。 ②『懐風藻』については大津皇子伝に関する論考をまとめた、その過程において本文研究の成果をふまえることができた。『懐風藻』大津皇子伝は、易の思想を背景として、大津皇子が天命を受けながら行心の誤った占いによってそれを遂げることができなかった皇子として造形し、『日本書紀』とは異なる歴史認識を示す意図を持っていると思われ、この大津皇子像は「懐風藻序文」および後人聯句「述志」とも共通性が見いだされることを論じた。 ②勅撰三漢詩集の本文研究については、コロナ禍により所蔵機関に出向いての原本調査が極めて困難であった。その中で、蓬左文庫、都立図書館については直接赴き、それぞれ所蔵している『経国集』『文華秀麗集』の原本調査と本文収集を行うことができた。これらの本文の性格に関する調査はこれからである。 ③国文学研究資料館所蔵のマイクロフィルム画像を取り寄せて、本文の調査を行った。特に『凌雲集』の本文について集中的に整理を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①勅撰三漢詩集『凌雲集』『文華秀麗集』『経国集』の諸本研究については、コロナの蔓延という予期せぬ事態に直面したことにより、所蔵機関に赴いての原本調査がほぼ困難になっった。 ②そのため、国文学研究資料館所蔵のマイクロフィルムの画像を取り寄せての本文整理と調査を先に進め、その結果を踏まえて所蔵機関での原本調査を行うことにした。 ③これまでの『懐風藻』の本文研究の成果のまとめに力を注ぎ、『校本懐風藻』を刊行することができた。 ④これら①~③を総合的に考えて、一部進展したところもあるが、本研究の主たる課題である勅撰三漢詩集の所蔵機関における伝本調査については遅れているので、「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
①『懐風藻』については、新たな伝本の発掘と紹介に努め、本文系統の精査を継続する。それと同時に、最善本文を見いだし、索引の作成の準備を進める。 ②現在、勅撰三漢詩集のうち『凌雲集』の本文の切り貼りを集中的に進めつつある。それを計画的に進めていく。 ③コロナ感染状況を見極めて、可能な限り、『凌雲集』『文華秀麗集』『経国集』の所蔵機関における原本調査と本文収集を行う。当初の計画に縛られず、できるところから進める。
|