2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K00342
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
土佐 朋子 佛教大学, 文学部, 教授 (00390427)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 勅撰三漢詩集 / 『凌雲集』 / 本文系統 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度(2023年度)は、岡山大学附属図書館池田文庫所蔵の『凌雲集』写本(P919-79)1本の原本調査と、西尾市岩瀬文庫所蔵『凌雲集』写本(6190-113-7)1本の原本調査を行った。池田文庫本は安永2年(1773)に、土肥経平(宝永4年〈1707〉~天明2年〈1782〉)が書写したものである。土肥経平は岡山藩士であったが、明和元年(1764)に蟄居の身となり、以来、古典籍の書写などの日々を送った人物である。本文にはところどころに親本を指すかと思われる「本」の語で示された文字の傍書が見える。岩瀬文庫本は、柳原紀光(延享3年〈1746〉~寛政12〈1800〉)旧蔵の1本である。柳原紀光は、藤原式家日野流にあたり、自ら著作を残すとともに典籍の書写収集に努めた人物である。懐風藻も柳原紀光旧蔵の1本が現存する。本文には、「・・・歟 不審」といった文字考証などの朱墨の書き込みが見える。目録が上毛野穎人から坂上今継までの1丁分脱落している。それぞれの本文の性格については、現在、他の写本の本文との比較対照を行っている最中である。また、『懐風藻』の本文研究の成果をもとに、作品の表現に関する研究成果も得られた。 研究期間を通して、勅撰三漢詩集の調査と本文収集を行ってきた。それと同時に、『凌雲集』について、収集した本文データをもとにして分析を行っている。まださらなる調査と本文収集と分析を行わないと本文系統についても最善本文についても結論は出ない。が、群書類従本の本文には、江戸期の書写の過程で案出された本文も含めて、複数の異なる本文が合体させられている可能性が高いこと、群書類従本の本文に至る前の本文の書写系統と異文の派生状況とを明らかにする必要があること、これらを確認したことが研究期間を通して得られた成果である。
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