2020 Fiscal Year Research-status Report
現代中国における日本文藝ー「審美現代性」を切り口にして
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19K00367
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 徳也 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10213068)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 世界文学史 / 周作人 / 魯迅 / 武田泰淳 / 竹内好 / 人情物理 / 徒然草 / 楊逸 |
Outline of Annual Research Achievements |
・近現代中国における日本文芸作品の翻訳・紹介の大状況を、関連著述を調査することでおおよそ把握した。予想通り、時代の進展の通り中国における日本文芸作品の翻訳・紹介は増加している。「建国・共産文学」時期(1950-1980頃)は意外にも「五四文学」時期(1915-1950頃)から大幅に点数は増加。「改革開放文学」時期(1980-)はそれがさらに二倍から十倍以上に増えている。中国における外国文学全体の中に占める日本文学の割合はごくわずか(ある「世界文学史」の教科書では2%の頁数)だが、21世紀以降日本文藝のプレゼンスはかなり大きくなっているようである。 ・「現代中国における日本文藝」の状況を分析する上で、それと対象的な事象として「現代日本における中国文藝」の状況を照らし合わせることは有効で有意義である。「現代中国における日本文藝」の研究計画においては、良い切り口になる研究対象として、中国人の周作人、魯迅、楊逸をあげておいたが、「現代日本における中国文藝」だと、武田泰淳、竹内好が良い切り口になり得る。 ・1920年代半ばの周作人による「徒然草」「古事記」抄訳が、日本古典作品の中国での本格的な翻訳紹介の始まりであるようだが、近代中国作家としての周作人は、「徒然草」翻訳の過程で判断力を表す「もののあはれ」を”人情物理”と翻訳することによって、1930年代以降の執筆活動の中心的美的=倫理的概念(”人情物理”)を獲得した。 ・戦時中の武田泰淳は日本作家と中国作家の特徴の違いを「信仰行動」と「批判精神」ということばで対比させた。武田泰淳は周作人の「日本管窺」の論説(日本人の中に理解困難な「宗教的情緒」がある)を読んでこのような対比を思いついたのではないか。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的に順調に研究は進展している。 個別の事例研究が一部(周作人、魯迅、武田泰淳等)に偏っており、それらに関しては、かなり深化されているが、その他への広がりがいまだ不足。現代中国における日本文藝の計量的調査はいくつかの論著、調査報告書によって目鼻はついた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの計画通りに進める。有効な切り口になるような個別の事例研究対象をもっと見つける必要があるが、ジャンル文学(推理小説、サスペンス等)やサブカルチャー(アニメ、漫画等)の領域を真剣に探索してみたい。中国大陸のネット記事が、中国の享受者の反応を探る上で一定の効果があると見込んでいる。
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Causes of Carryover |
・出張が好ましい状況になく、旅費の支出が全くなかったことが大きい。 ・物品、人件費も、書類の受け渡しや現物の受け渡しが、コロナ禍において非常に煩瑣になり、支出がわずかになった。
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Research Products
(2 results)