2022 Fiscal Year Research-status Report
現代中国における日本文藝ー「審美現代性」を切り口にして
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19K00367
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 徳也 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10213068)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 周作人 / 魯迅 / 審美現代性 / デカダンス / 「野草」 / 「私の失恋」 / 徐志摩 / 太宰治 |
Outline of Annual Research Achievements |
課題の副題に掲げた「審美現代性」という観点と研究代表者がその観点を導き出した周作人と魯迅の文芸活動に対する探究を主に進めた。 ・「芸術のための芸術」というスローガンや「デカダンス」=頽廃形式(decadent style)として表面化する「審美現代性」は、経営学等で言われる「部分最適」(「全体最適」に対する)を求める衝動と類縁性が高く、柄谷行人が一時力説していた「外部」への志向(メタ形式化)とちょうど逆の衝動を帯びたものとして解釈できる。周作人は「デカダンス」のエートスを一つの方法として内面化したが「デカダンス」の技法は拒絶、魯迅は逆にそのエートスを拒絶し技法だけ利用した。 ・魯迅の作品における審美現代性は、おそらく「不周山」『野草』各篇、『故事新編』各篇に顕著に現れている(利用されている)。しかし、「不周山」の中の一部の描写や『野草』の「私の失恋」の扱い方等には、審美現代性に基づく彼自身の表現に対する、メタレベルからの冷笑が窺え(魯迅の中には、審美現代性に導かれて芸術主義的な表現を果たすことを求める素朴な芸術家魯迅とそんな自分を冷笑する現実主義的メタ魯迅がおり)、さらに『野草』以降は、現実主義的メタ魯迅が作品生成に介入すること自体を方法化して作品創作を続けたと考えられる。 ・1923年頃から旺盛な文芸活動を展開し中国文壇において影響力を増しつつあった徐志摩の芸術主義的な作風や議論、態度等「徐志摩的なもの」全体に対する嫌悪と反発が、『野草』執筆時の魯迅を規定する一つの重要な要素だった。それは、魯迅の自作「私の失恋」に対する扱い方等から導き出せる。 ・中国の豆瓣網のデータから、中国の読書界における太宰治に対する注目がゼロ年代(2000年代)に高まっていたことが窺える。「人間失格」等に激しく揺さぶられたかなり分厚い読者層が存在するようで、初歩的な印象では、若い世代が多いようである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作業仮説に基づいた調査研究は、正題「現代中国における日本文芸」の方面でも、副題の切り口としての「「審美現代性」の吟味においても、すでに一定の成果はあげてきたように思われる。あとは来年度の成果を付け足し、それらをうまく整理統合するだけである。
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Strategy for Future Research Activity |
あと一年を残すのみとなったが、あとは、これまでの成果に今年度の成果を付け足し、うまく整理統合するだけで充分ではないかと思われる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために海外渡航を控えたことが遠因の一つである。 研究図書購入費に当てる予定
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Research Products
(4 results)