2020 Fiscal Year Research-status Report
Studies of Editions of"Sanguo-Yingxiongzhizhuan"
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19K00380
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
中川 諭 立正大学, 文学部, 教授 (20261555)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 三国英雄志伝 / 三国志演義 / 版本 / 簡本系 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、前年度に収拾した『三国英雄志伝』の版本数種のデジタルデータ化とその校訂を行った。その版本は、美玉堂本・松盛堂本・張氏蔵甲本・嘉慶七年本・上海残本の各本である。これらの画像データをもとに、北京の北京義春秋文化発展有限公司にデータ入力を依頼した。そしてできあがったデータを再度自分自身で校訂を行い、コンピュータによる比較調査の結果が正確に出るように万全を期した。 それらのデータをもとに、各種『三国英雄志伝』の版本を比較し、今年度は美玉堂本に関する研究、松盛堂本に関する研究を論文として発表した。 美玉堂本は、ドイツ・ワイマールにあるアンナ・アマリア公爵夫人図書館に蔵されている。この本は、楊美生本を翻刻して成立した。中国国家図書館に蔵される魏某本も「二刻三国英雄志伝」と題する本であるが、この美玉堂本とは継承関係にはない。上海図書館にも美玉堂本と称する本が蔵されているが、これはワイマールの美玉堂本の二世代後の翻刻本である。清代以降、『三国英雄志伝』系統の簡本『三国志演義』が大変流行していくが、美玉堂本は『三国英雄志伝』流行の先駆となる版本である。 松盛堂本は、遼寧図書館に蔵される。この本の行款は六巻本と同じであり、また文章も極めて近い。しかし十二巻であって、巻数が異なっている。この本は六巻本の中でも大文堂本に最も近いが、必ずしも継承関係にはない。また十二巻本は六巻本をもとに成立したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、当初夏休み期間にイギリス・ロンドンで開催される学会に参加すると同時に、ロンドンにて大英博物院図書館に蔵される『三国志演義』の版本を調査する計画であった。しかしながら新型コロナウイルス感染症流行の影響により、イギリスへの渡航を中止せざるを得なかった。学会はオンラインでの開催になったため国内から参加し、予定の研究発表(発表題目「關於松盛堂本《三國英雄志傳》」)を行うことができた。しかし現地に行かなければならない版本の調査は、本年度は行うことができなかった。 また令和2年度中に、中国において新たに数種類の『三国英雄志伝』が発見された。すなわち、輝県博物館蔵本・介休市開門書厮書店蔵本・三譲堂本・張青松氏蔵己本である。また北京の首都図書館にも『三国英雄志伝』の版本が一種類蔵されていることが分かった。これらの版本について、数枚程度の写真や簡単な書誌情報は入手できたが、それだけでは十分な研究を行うことはできない。やはり現地に出かけ、原本を直接調査する必要がある。しかしながらやはり感染症流行の影響で中国への渡航ができず、研究を進められないでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在未着手の資料は全て海外にあり、研究を大きく進めるためには、海外渡航が必要である。そのため、今後の計画は感染症流行の終息に大きく影響されそうである。 幸いに感染症流行が終息に向かい海外渡航が可能になれば、まず中国に行って、新たに発見された資料を調査する。そしてその調査結果に基づき、研究論文を執筆する。またイギリス渡航も考え、出かけることができれば、令和2年度に調査する予定だった版本の調査を行いたい。 もし今年度も海外渡航が不可能であれば、すでに収拾済みの資料をもとにして、『三国英雄志伝』全体の変遷過程を考察していく。また中国における新発見資料については、中国の研究者に協力を依頼し、複写または写真を入手できるか試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行により、当初予定していた海外渡航が全て取りやめとなったため、その旅費が全く執行できなかった。 令和3年度中に再び海外渡航が可能になれば、令和2年度に予定していた海外における調査を行う。もし感染症が終息せず海外渡航ができなければ、中国で発見された資料を中国在住の研究者に協力していただいて、複写または写真を入手する。そのための費用とする。
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