2021 Fiscal Year Research-status Report
日本所蔵『西廂記』孤本の調査と研究――李卓吾批評本を中心に――
Project/Area Number |
19K00383
|
Research Institution | Kyushu Kyoritsu University |
Principal Investigator |
黄 冬柏 九州共立大学, 経済学部, 教授 (70315026)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 西廂記 / 元雑劇 / 明刊本 / 李卓吾 / 書誌学 / 游敬泉 / 塩谷温 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、天理大学図書館所蔵の游敬泉刊『李卓吾批評合像北西廂記』について、天理大学図書館にてその原本を確認した。また中国へ赴いて関連刊本の調査を実施する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、海外への研究調査が困難になった。そのため、関連する影印本やインターネットのデータなどに拠って以下の研究を行った。新型コロナウィルス感染症が収束した後、取り上げる刊本の刊行場所と思われる建陽を中心に、現地にある図書館や資料館に所蔵されている地方誌などの関連資料を収集すると同時に、関連刊本との比較考察を実施する予定である。 天理大学図書館所蔵の游敬泉刊『李卓吾批評合像北西廂記』は、管見の及ぶ限りにおいて、まだ詳細な考証が実施されていない。本研究はこの刊本を精査した上で、内閣文庫所蔵の継志斎刊『重校北西廂記』(いわゆる継志斎本)及び天理大学図書館所蔵の起鳳館刊『元本出相北西廂記』(いわゆる起鳳館本)との比較考察を通して、三種刊本の伝承関係を究明したと同時に、游敬泉刊の特徴とその価値を明らかにした。また、この刊本の旧蔵者である塩谷温についても、その関連文献を調査することで、近世日本における中国古典の受容という視点から、当時の漢籍入手の経緯とその受容の実態を探ってみた。 以上の調査研究の成果として、「游敬泉刊『李卓吾批評合像北西廂記』について」と題して、九州中国学会にて研究発表を行った後、論文をまとめて公刊する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、国内への実見調査が制限され、また中国への現地調査が困難になったため、「研究計画」に予定していた海外調査が実施することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は天理大学図書館所蔵の三槐堂刊『李卓吾先生批評西廂記』と游敬泉刊『李卓吾批評合像北西廂記』について、関連刊本との比較研究を行うと同時に、これらの刊本の旧蔵者である塩谷温についても、さらに調査を進めていく予定である。 天理大学図書館に所蔵されているこれらの刊本は、管見の及ぶ限りにおいて、まだ詳細な考証が実施されていない。本研究は、天理大学図書館へ赴いてこの二種の刊本を実見分析した上で、中国国家図書館所蔵の関連刊本との比較検討を施し、個々の特徴を明らかにする。また、旧蔵者である塩谷温についても、その関連文献を精査することで、当時の漢籍入手の経緯とその受容の実態を辿っていく。併せてこの両刊本は塩谷温の訳本『西廂記』(東京:昌平公司、1947年初版)及び『歌訳西廂記』(天理:養徳社、1958年)に与えた影響についても具体的に究明していく。 さらに、中国への現地調査を施すことによって、この二種の『西廂記』孤本の刊行場所と思われる建陽を中心に、現地にある図書館や資料館に所蔵されている地方誌などの関連資料を収集し、二種の『西廂記』孤本の刊行と伝播の実態を明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
研究計画書を作成した当初に、中国の杭州(令和元年度)・建陽(令和2年度)・上海(令和3年度)に赴いて現地調査を行う予定であるが、新型コロナウイルス感染症の影響により、中国への渡航ができなくなるため、現地調査が実施することができなかった。 新型コロナウィルス感染症が収束した後、取り上げる刊本の刊行場所と思われる杭州と建陽を中心に、現地にある図書館や資料館に所蔵されている地方誌などの関連資料を収集すると同時に、関連刊本との比較考察を実施する予定である。
|
Research Products
(4 results)