2019 Fiscal Year Research-status Report
文化研究勃興期におけるウェールズ的経験の意味―「例外的戦闘性」とR・ウィリアムズ
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19K00385
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大貫 隆史 東北大学, 文学研究科, 准教授 (40404800)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 短い文化革命 / レイモンド・ウィリアムズ / アナイリン・ベヴァン / アラン・ルイス / ウェールズ / 文化研究 / カルチュラル・スタディーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「例外的な戦闘性(exceptional militancy)」を体現していたと解しうる20世紀前半のウェールズのワーキングクラスとそこから成長を遂げた書き手たちを主な分析対象としながら、その実に両義的な「短い文化革命(short cultural revolution)」の実践の様相を、文化研究(カルチュラル・スタディーズ)の前-勃興期(pre-emergence)と呼称しうる時期に探るものである。本年度2019年度は、(前-)勃興期文化研究の関連文献、ウェールズ英語文学関連文献、イギリス政治史関連の文献等の収集を行った。また、原則無料の医療制度であるNHS(国民健康保健)設立に尽力した政治家として知られるアナイリン・ベヴァン、詩人及び短編小説家のアラン・ルイス、作家グウィン・トマス、レイモンド・ウィリアムズなど対象としながら、ベヴァンの「戦闘性」とは、いわば「いま・ここ」で即座に人々の意識を劇的に変化させてしまおうとするそれのことであること、そして、ルイスやウィリアムズにはそうした「例外的戦闘性」はアクセス困難なものであった可能性が高いこと、ただし、そうした困難を経験したからこそ、ベヴァンら先行世代のそれとは異なる、「ふつうの人々(ordinary people)」との関係性のかたちを生産することができたのではないか、といった考察を進めた。そうした「かたちforms」とは、ルイスであれば、非歴史的な「ふつうの人々」という「かたち」、ウィリアムズであれば、「ふつうの人々」を一種「裏切る」ことになる突出した人間、という「かたち」のこととなる。とりわけ、後者の「裏切り」という問題系について、公表論文を準備する過程において、その両義性を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部分野を除いて資料の収集は順調に進み、成果公表論文も公開できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、関連文献の収集と分析を進める。また、本年度は、ベヴァン的な「例外的戦闘性」との比較を念頭におきながら、、R・ホガートやE・P・トムソンらにおける「戦闘性」の有無や、その性質を考察してゆく。
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Causes of Carryover |
ウェールズ英語文学関連文献について、収集対象とすべき図書の検討を行うための、予備的な分析作業に遅れが生じてしまったため。
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