2021 Fiscal Year Research-status Report
文化研究勃興期におけるウェールズ的経験の意味―「例外的戦闘性」とR・ウィリアムズ
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19K00385
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大貫 隆史 東北大学, 文学研究科, 准教授 (40404800)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 文化研究 / レイモンド・ウィリアムズ / フォームの研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
仮に「文化culture」というものが、「変化」を少なくない度合いで想定しながら使われる言葉であるとすると、文化研究(カルチュラル・スタディーズ)において、「変化の長さ」というものが鍵となる場合が多くなってくるだろう。そのとき、カルチュラル・スタディーズ勃興期におけるウェールズ的な経験、すなわち、本研究課題が「例外的な戦闘性」と呼ぶ、急激な変化の経験が重要性を増すことになる。A・ベヴァン、A・ルイスらを対象にしながら、そうした「いま・ここ」での即時的変化をもとめる感情がどのようなかたちをとったのか考察し(初年度目)、レイモンド・ウィリアムズの書き物がそうした感情構造への複雑な応答として解しうることを考察してきた(二年度目)。三年目となる本年度は、R・ウィリアムズと第二世代のニューレフトの論者たち(P・アンダーソンやF・マルハーン、A・バーネット)との緊張感のなかに、「例外的な戦闘性」への応答としての「長い革命」のかたちを見ることを、公表した論文の準備過程のなかで試みた。19世紀の小説家ジェイン・オースティンの書き物をめぐって、その政治性の希薄さを非難するニューレフト第二世代に対し、1970年代後半のウィリアムズは「社会」を「政治」から分離させ、前者の「長い変化」に希望を託させようとするのだが、こうした側面の両義性を考察した。また、ウィリアムズの言う「かたち(フォーム)」がいかなるものかを、昨年度の研究の継続として、とくに、フォームを記述するものとふつうの人びととの関係に着目しながら、また、ごくポピュラーな文化的作品ジャンルについて一般的な分析を進めながら、そうした両義性のなかに位置付ける考察も、口頭発表の準備過程のなかで試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウェールズ的経験、すなわち「例外的戦闘性」の経験との関係性のなかに「長い革命」を位置付ける研究を進め、その考察に深く関わる論考を公表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度となり、これまでの研究成果のなかで、深い関連が見いだされた書き手や書き物について考察を深め、その成果公表を目指す。
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Causes of Carryover |
関連学会・研究会への出張旅費の執行が、出張制限などの事情でで困難になったため。これについては、翌年度での執行を予定する。
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Research Products
(2 results)