2020 Fiscal Year Research-status Report
Sharing One's Stories: the Retrospect, the Present and the Prospect in Eighteenth-Century English Writings in Print and in the Archives
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19K00390
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 実佳 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40297768)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 啓蒙 / 人生の物語 / 手紙 / 未来 / 風刺 / 女性 / 学者の使命 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、フィクションの中での、登場人物が人生を語る設定では、これまでの研究でもとりあげてきているセアラ・フィールディング(1710‐68)の作品を再検討を続けている。ジョンソン(1709-84)が「茶詩人」と評される書物に関する考察では、社会の中での学者のスタンスの取り方と理想を取り上げた。個人の記録からの考察においては、女性たちの日常の記録と啓蒙主義的な考え方について、考察を進めているが、宗教的な内省でも、人生の物語においても、語られる内容は、過去、あるいは過去と現在のつながりに重点があり、未来は宗教的に託されるものであり、社会の未来は個人の思考や想定の対象になりにくい。そんな中で、知識を集積し、選定して「編集者」の取捨選択が入った知識・情報を世の中に送り出す様式で顕著な功績のあったバーボールド(Anna Laetitia Barbauld, 1743-1825) に注目した。彼女は、50 巻にもわたる小説のコレクションである『英国小説家』(1810)の解説者であり、莫大な知識を集積し、壮大な視野をもって、一般読者たちにたいする識者としての使命を果たそうとした文学者であり、そしてまた広い領域に目を配ることのできる企業家の面ももっている。彼女の334 行に及ぶ詩『1811 年』(1812)は、年号を題名とする詩が風刺として書かれるという伝統に沿ったものであり、非常に衒学的で、また時代の関心事に即した時局的要素をもつ。そこで彼女が把握する現在は、すでに足元が危うくなっている(そしてそれに気づこうとしない)老いた偉大な国の現在であり、未来は荒廃である。しかし、未来は、自国から自由を勝ち取った国に文化として継承される。未来を政治的支配に求めることの空虚を指摘し、文化的帝国の永続性に望みをつなごうとしているのであり、また他に継承されて、自国は衰亡していくことを諦観し、揶揄する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、Covid-19のために、通常とはかなり異なる年度となり、オンライン授業への対応など、新たな試みのため、リサーチに充てる時間をとることが少々難しかった。またそれ以上に、図書館やアーカイヴを訪れることが困難であったために、当初の予定とは異なる資料を読むことになった。さらに、海外での発表の機会を得ることができなかったので、発表してフィードバックを得ることで進むはずの段階を踏むことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
未来についての想定を、分野を絞って考える。上記のように、18世紀の人々が、国の未来、人類の未来について想定することは珍しいが、特定の分野において、過去の記録と現在がどのように結びつけられ、そして未来に目を向け、事態を想定することが何を生んでいるのか、詳細に分析して見る予定である。まず、過去に社交の場での役割を考えたことのあるチェスをとりあげ、遊興と戦いと詩作の場での過去と現在と未来に関する考え方をとらえる。また、家庭内で対処する不調や病について、過去の経験についての語りと、未来への備えについて、女性たちの認識と想定を分析する。
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Causes of Carryover |
2020年度は、海外での研究発表もリサーチもできず、また、国内での研究会などが中止やオンライン開催となる状況で、旅費の使用計画を変更せざるをえなかったため。 18世紀イギリスの人々が残した日記や手紙、その他書類などの手稿資料を読み、研究を進める調査のための旅費、それら一次資料を考察するために必要となる補助資料のための費用、また学会が再開されれば、海外での研究発表のための旅費として次年度以降に使用する予定である。
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