2022 Fiscal Year Annual Research Report
Sharing One's Stories: the Retrospect, the Present and the Prospect in Eighteenth-Century English Writings in Print and in the Archives
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19K00390
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 実佳 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40297768)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 18世紀 / 貴族女性 / 日記 / 手紙 / 自己把握 / 読書 / 慈善 / 未亡人 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度にCOVID-19の流行による世界的な状況により、イギリスでのリサーチやアメリカ、イギリスでの学会発表を行うことが困難になったことから、海外旅費としての予算を2022年度に繰り越した。もともと2021年度は海外リサーチとそれを活かしての発表を集中的に行う予定であったので、2021年度の研究計画は大きく変更せざるを得ず、また2022年度の計画もそれに伴って当初の計画とはかなり違うことになった。2022年度は繰り越した金額も含めてそれを最も有効に使うことができるのは、研究成果を書物の形にすることであると考えたので、それを実現させることに注力した。新な資料を扱うことは叶わなかったがかわりに2022年度中に書物としてまとめる作業を行うことは、研究期間全体にわたって考えてきたことを明確にすることであったので、そのように予算と時間を使うことができて非常に幸運であった。年度の半分程度で執筆、四分の一程度で出版社とのやりとり、残りで校正を行うことになった。 書物の内容は、研究の核にしてきたスペンサー伯爵夫人(1737-1814)の手稿資料を使って18世紀の女性の記録のつけ方、たどってきた過去の捉え方、現在の自己の位置づけ、そして未来の展望の傾向について詳細に考察するというものであった。彼女の場合、若いころからの友人との文通や著名人たちとの交流に加えて、長い人生の大部分を手紙のやりとりで共有することになるハウ夫人(1721-1814)とかわしていた手紙が膨大な数にのぼり、そして子や孫との文通が加わり、その上、彼女に慈善を求める請願者たちの手紙とそこに書き込まれた対処のしかたが彼女の人生を物語る。この研究では、自らを意識的に律する生活を送り、そのことをまずは自分に向かって確認するために文字の記録として残していた彼女の文学性の豊かさとそれに依存する危うさについても注目した。
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