2019 Fiscal Year Research-status Report
Border Culture as a Strategy for Defying Intolerance and Revitalizing Diversity in Contemporary US
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19K00396
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
喜納 育江 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (20284945)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / 境域文化 / トランスナショナル / 不寛容 / 日系アメリカ人 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ハワイ州やカリフォルニア州のほか、ニューメキシコ州やテキサス州など、アメリカとメキシコの国境地域の現在における「不寛容」の言説に関する調査の実施も予定していたが、COVID-19による渡航制限などにより、計画の大幅な変更を迫られることとなった。今年度の実績としては、まず、カリフォルニアの日系移民に対する「不寛容」な言説の歴史が、今日のアメリカ社会におけトランスナショナルな「他者」排斥の移民政策の言説に関し、カリフォルニアの日系人コミュニティに対する聞き取り等を通した情報の収集と分析を行ったことが挙げられる。カリフォルニアとハワイは、アジア・太平洋地域とアメリカ大陸の「境域」ともいうべき異文化接触領域が形成されていた点で共通するが、カナカマオリ族の特色に富んだ島嶼文化圏に白人がアジア圏の移民と共に参入する形で形成されたハワイと比較すると、カリフォルニアにおける異文化接触は、先住民を駆逐する形で白人が築いた大陸にアジア圏の移民が参入することで形成されているという点で異なる。今年度の調査では、特に第二次世界大戦といった有事に際して、アメリカ社会では日本人に対する敵意とアメリカの理念である多様性や民主主義が、日系アメリカ人の強制収容をどのような表現で正当化していったか、また、こうしたアメリカ国家の欺瞞が今日様々なエスニックマイノリティへの「不寛容」な言説にどのように通底しているかについて、カリフォルニアの日系アメリカ人コミュニティ形成に重要な役割を果たすメディアの言説や、カリフォルニア在住の日系アメリカ人の発言などによって明らかにした。なお、予定していた米墨国境に関しては、21世紀に出版された小説を中心とした考察にとどまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば、本年度3月にニューメキシコ州においても米墨国境地域の「境域」の現況に関する現地聞き取り調査や文献収集を実施する予定であったが、COVID-19によって海外渡航が制限されたために実現しなかった。しかしながら、米墨国境に関して21世紀に出版されたチカーナ作家による小説に関する学会発表を行った。また、海外渡航制限が通達される前に行ったカリフォルニアとハワイでの調査では、不十分ながら文献収集を行うことができたので、多少は研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
21世紀のアメリカ社会における移民コミュニティに関する社会学的な移民研究で、今日のアメリカの公教育では「選択的文化変容」や「バイリンガリズム」の推進が支持されていないことが指摘されていることも指摘されていることがわかったが(村井忠政 2014)、本研究ではそれがなぜ推進されていないのかという点の考察を深める必要があると考えられる。また、感染症の世界的拡大という思わぬ事態に見舞われたため、申請時の研究計画や研究方法を見直す必要もある。来年度以降、現地調査ができない場合は、遠隔での資料取り寄せや、オンラインでの面談を申し込むなどの対応が必要であることが予測される。
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Causes of Carryover |
COVID-19により、今年度3月に予定していた米国出張を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。渡航の状況が許せば、今年度3月に予定していた米国における調査旅費として使用する計画である。
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