2021 Fiscal Year Research-status Report
19世紀アメリカにおける健康改革運動と文学作品の相補的関連性についての研究
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19K00400
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
稲垣 伸一 実践女子大学, 文学部, 教授 (00269599)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 健康改革 / 食事改革 / 性 / 水治療 / キリスト教 |
Outline of Annual Research Achievements |
主に2019年度にアメリカ合衆国で収集した菜食主義を中心とした食事改革と性に関する言説の資料を読解・分析し、アメリカ健康改革運動(Health Reform Movement)と水治療(watercure/hydropathy)との相互関連性について考察した。そしてその結果を論文「菜食主義から水治療へ-Sylvester GrahamとMary Gove Nicholsにとっての健康、性、宗教」(『実践英文学』第74号)にまとめた。 本論では、南北戦争以前における19世紀健康改革の一要素である、食事改革の理論家にして運動家Sylvester Grahamの思想の影響を、水治療の実践者であると同時に小説家でもあったMary Gove Nicholsの小説やその他の文章から指摘した。また、二人の関連性は食事改革にとどまらず性に関わる健康改革思想にも及び、19世紀前半にピークを迎えるキリスト教信仰復興運動「第二の覚醒」から強く影響を受けていることも検証した。 これにより本研究課題計画時に研究の目的として設定したように、健康改革のレトリックに潜む至福千年王国の到来を待つ者の宗教的願望にまで検討の対象を広げ、それらを水治療の推進者Mary Gove Nicholsの言説から分析し、特に彼女の小説を分析対象とすることにより菜食主義や水治療を含む健康改革運動という社会的事象にとどまらず、宗教的信条についても文学作品から考察することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題を進める上で2019年度にアメリカ合衆国で収集した資料の読解・分析はかなり進んだ。しかし元々計画していた2度目の資料収集は未だ実施できておらず、これまで以上に広範囲な資料収集がまだできていない。 また、南北戦争以前の19世紀前半から半ばにかけての時代についての考察は今年度ある程度進んだものの、南北戦争後の19世紀後半については未着手である。
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Strategy for Future Research Activity |
まだ着手していないJohn Harvey Kelloggたち19世紀後半における健康改革運動家の思想を研究対象とする。 また、本研究課題採択後に広まったCovid-19の流行をきっかけとして、19世紀における感染症と健康改革運動との関係についても考察できないかと考えている。 これらの研究を推進するために、2019年度以降途絶えている資料収集にも努めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス流行のため、国内外での資料収集に制約があり、また学会もすべてオンライン開催となったため、旅費としての支出がなかった。 2022年度も特に国外での資料収集には制約があるかもしれないが、学会等の対面開催は再開される可能性もある。有効な資料を収集し、また、他の研究者との交流もはかりつつ、許される範囲内で最大限の成果を残すことができるよう研究を進めていきたい。
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Research Products
(1 results)