2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K00403
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松永 典子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (00579807)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フェミニズム / モダニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、第一波フェミニズムの終わりから現代までの時代にポストサフレジズム(イギリス男女同権参政権獲得以降)という名を与えるとともに、この時代を一連の継続する時代として捉えることによって、モダニズム、冷戦、新自由主義を包括的に理解し、イギリス女性文学のとくに社会主義運動の成功と失敗を系譜的に、また、グローバルな現象として考察するものである。とくに英米フェミニズム文学および文化を中心に考察する本課題が目指すのは、20世紀以降のイギリス文学における連帯と分断の言説構造を、ジェンダーの観点から解明することである。 2020年度の研究成果は、論集の編著およびその論集の二つの章の執筆である。同論集の二本ある論文の一つは、本課題の初年度に学会誌に発表した論文を元にしており、大衆と知識人が二項対立的に論じられるモダニズム期を、フェミニズムの文脈から再解釈するために、文学・文化・産業という観点から考察した。第二の論文では、第一の論文の議論を時間的に拡大し、20世紀後半以降の現象とされるポストフェミニズムの枠組みと接続させて考察した。この二つの論文の執筆が本年の主たる研究実績となるが、研究代表者自身の手術および入院のため刊行時期が遅れ、出版は2021年になる(2021年5月現在、校了済み)。 なお、本年度に予定していた在英研究者の来日および研究代表者自身の渡英資料調査については、新型コロナウイルス感染症のため、実施することが叶わなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れていると考える理由は、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大によって日本への出入国がともに制限されたために、当初に予定していた英国在住の研究協力者に来日していただくことが叶わなかった点と、研究代表者の渡英による資料調査ができなかった点である。その一方で、2021年度に出版予定の編著作業および論文の執筆について専念できたという意味で、研究を一定程度進めることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題の最終年度においては、本研究課題の当初の年度計画に従って、作品分析、理論研究の継続、翻訳の完成、論文執筆をおこなう。年度計画に記載した海外からの研究者の招聘については日程の見直しが必要であるが、当該研究者から来日の意思を確認しているので、情勢を見極めながら日程の再調整をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、旅費を使用できなかったためである。第一に在英研究者の日本招聘、第二に研究代表者自身の渡英資料調査という二つの旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症のため日英ともに海外への移動制限がなされて実現することができなかった。どちらも状況を見極めながら、可能な限り2021年度に旅費として使用することを計画している。万が一実現できない場合は本課題の延期を検討している。
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