2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K00403
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松永 典子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (00579807)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フェミニズム / モダニズム / モダニティ / アールデコ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、第一波フェミニズムの終わりから現代までの時代にポストサフレジズム(イギリス普通参政権獲得以降)という名を与え、この時代を一連の継続する時代として捉えることによって、モダニズム、冷戦、新自由主義を包括的に理解し、イギリス女性文学のとくに社会主義運動の成功と失敗を系譜的に、また、グローバルな現象として考察するものである。とくに英米フェミニズム文学および文化を中心に考察する本課題が目指すのは、20世紀以降のイギリス文学における連帯と分断の言説構造を、ジェンダーの観点から解明することである。
2021年度の研究成果は編著『アール・デコと英国モダニズム』の論集の出版である。本論集は、モダニズムと並び称される20世紀初頭の英文学を、アール・デコという補助線を引くことによって、アール・デコは一般に1920年代の装飾様式として理解されているが、集団性を重視するフェミニズム文学の可能性をさらに見極めるために、大量生産大量消費を可能にした産業および文化としてのアール・デコに注目した。研究代表者は編著者として二つの論文を寄稿した。第一の論文ではオーデン・グループにつらなる英国男性モダニストたちとヴァージニア・ウルフとの関係をとらえ直し、フェミニズムの理想の希求と挫折を明らかにした。同様に、第二の論文では、21世紀の現代の知識人セリーナ・トッドと作家J. K. ローリングというトランス女性排除の構造を、ポストフェミニズムの枠組みを接続させて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れていると考える理由は、第一に、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大によって日本への出入国がともに制限されたために、当初に予定していた英国在住の研究協力者に来日していただくことが本年も叶わなかった点である。第二に、研究代表者の長期治療のため渡英も含め資料調査が思うように実現できなかった点である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べた理由で本課題研究を延長することとした。2022年度においては論文集への寄稿(Vera Brittain作品分析)、研究協力者の招聘を実施する。現在すでに、状況を見極めながらではあるが、研究協力者の来日および研究会開催のための関係者と調整している。また2021年度後半に研究代表者の渡英の中止を決定し、必要文献の収集分析に切り替えて作業を進めている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、に在英研究者の日本招聘、第二に研究代表者自身の渡英資料調査という二つの旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症のため日英ともに海外への移動制限がなされていずれも実現することができなかった。在英研究者の招聘については2022年度に予定し、すでに実施に向けて関係者と調整している。研究代表者の渡英は中止し、書籍購入および論文収集に切り替えることで研究課題を実施する。
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Research Products
(1 results)