2021 Fiscal Year Research-status Report
U.S. Cultural Diplomacy toward Japan and the Necessity of National Literature: Creating a National Writer of Faulkner
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19K00404
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
森 有礼 中京大学, 国際学部, 教授 (50262829)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フォークナー / 日本の印象 / 長野におけるフォークナー / 日本の若者達へ / 国民作家 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、当初の研究計画である、日本におけるフォークナーの受容と、アメリカ合衆国におけるフォークナーの国民作家としての評価形成とのうち、後者に焦点を当てて研究を行った。特に冷戦期のアメリカにおいてフォークナーが果たした政治的役割に関して、フォークナーの「人道主義的」受容と、そこで形成された作家のイメージがどのように形成されたかについて、フォークナーの手稿及び手紙などを参照しつつ、その文学的キャリアの再形成と、合衆国における文化人としての受容について調査を進めた。これらの研究成果については2023年7月8日開催予定の「英語圏文学研究会」にて口頭発表の予定である。併せてその発表原稿を基とした研究論文として執筆中であり、2023年3月刊行の『中京英文学』誌上にて成果発表を行う予定である。 こうした研究と並行して、フォークナーの戦後日本における受容について、昨年度に引き続いて研究を進めた。具体的には、フォークナーの来日時における活動の足跡をたどり、また彼が日本に残したエッセイ"Impressions of Japan"と"To the Youth of Japan"、及びその記録映画であるImpressions of Japanを分析し、そこにフォークナーが強調した、敗戦国としての国民的アイデンティティが、文学的失地回復を求めるアメリカ南部人及び日本人の国民的衝動として、敗戦後の南部及び日本の文芸活動を促進してきたことを確認した。これらの研究成果については、2021年3月30日に開催されたフォークナー訪日論集研究会第1回研究会において、「『日本の印象』研究―フォークナーと『ゴジラ』のレトリック―」として口頭発表を行った。 併せて冷戦期のアメリカに関する背景研究として、2021年8月に『物語るちから―新しいアメリカの古典を読む―』(新・アメリカ文学の古典を読む会編)を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は、特にアメリカ合衆国におけるフォークナーの受容について、主に日本国内の資料を調査し、それに基づく評価と検証を行った。これは上述の2022年7月の研究発表として成果報告を行う予定である。 但し、2020年度から続く新型コロナウィルス感染症の世界的蔓延のために、多くの研究計画を中断もしくは変更せざるを得なかった。そのために、研究の進捗は相当程度遅れていると判断せざるを得ない。具体的には、2019年度に実施した戦後日本のフォークナー予備的調査に続き、2020年度実施予定であった、アメリカ合衆国におけるフォークナーの「国民作家」としての評価形成に関するミズーリ州立大学等での現地資料調査が、昨年度に引き続き、現時点まで実施不能な状況にある。このため、上記の問題についてはほぼ全く研究が進行していない状況にある。 本研究の遂行については、日本におけるフォークナーの受容に加えて、アメリカ合衆国における「国民作家」フォークナーの評価形成の過程を検証する必要があるため、この部分に関する研究の遅延は、本研究課題全体の達成に多大な影響を及ぼしている。 また日本国内におけるフォークナーの受容を詳細に調査するために、資料調査をさらに進める必要があるが、関連資料を所蔵する長野市図書館などの施設訪問も困難な状況にある。このため、現在実施している日本側の需要調査についてもこれ以上の進捗が停滞している状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究推進に向けて、必要とされる文献資料の収集が急務である。研究計画立案当初に訪問予定であった海外のアーカイブ施設の訪問を企図し、可能な限り速やかに、同施設の訪問調査を実施する予定である。但し、現時点では諸々の国際情勢を考慮し、まずは国内のアーカイブ施設を、新型コロナウィルス感染症の状況を勘案しながら訪問踏査する予定である。具体的には、長野市立図書館所蔵の、フォークナー来日に関する一次資料群の踏査を徹底し、それに基づいて前述の論文「冷戦期の日本文化外交と国民文学の必要性-国民作家フォークナーの創生-」に対する補完的研究を推進する。 但し、研究開始後2年に亘って当初のアーカイブ調査に遅れが生じているため、研究期間を当初の2021年度末から1年延長し、新型コロナウィルス感染症が収束した時期に実施することも視野に入れて、研究スケジュールを再調整している。
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Causes of Carryover |
2021年度は、前年度から続く新型コロナウィルス感染症の世界的蔓延によって、当初予定していた海外のアーカイブ施設の訪問踏査が不可能となった。このため、同年度に予定さ れていたアメリカ合衆国ミズーリ州立大学フォークナー研究所などの施設訪問に予定されていた旅費が未執行のままとなっている。 また同様に、国外の著名な研究者を招聘して、本研究についての知見を得、また研究上の勧告指導や情報提供を受ける予定で計上していた人件費・謝金についても、来日の予定が立たず実行不可能となった。このため、同枠の予算も未執行のままとなっている。
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