2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00406
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
池末 陽子 関西外国語大学, 外国語学部, 助教 (10792905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 克昭 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (10182908)
後藤 篤 京都府立大学, 文学部, 講師 (70761980)
千代田 夏夫 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (80631887)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ホテル / アメリカ文学 / 文化史 |
Outline of Annual Research Achievements |
全員が2019年度予定していた研究発表を遂行した。 池末は、日本アメリカ文学会第58回大会シンポジウム「アメリカ文学研究の終わらない戦後/南部/昭和」(2019年10月6日)のパネリストとして、ポー研究における南部性(南部ホスピタリティ)受容について、19世紀アメリカにおけるホテル文化受容の原点へと繋がる試論を発表した。渡邉は、日本アメリカ文学会第63回関西支部大会フォーラム 「メルヴィルとホイットマンの時代―生誕200年を記念して」 (2019年12月14日)の講師として、デリーロとメルヴィルの作品に共通して見られる「歓待」について、ホテル的表象の視座を導入しつつ、考察を行った。後藤は2019年8月27日~9月2日の期間にアメリカに出張し、ニューヨーク公共図書館のバーグ・コレクションのウラジーミル・ナボコフ・アーカイブにて、『ロリータ』の映画脚本の草稿やスタンリー・キューブリックとの往復書簡等、本研究に関連する資料を調査した。日本ナボコフ協会ワークショップ「Insomniac Dreamsを読む」(12月14日)で、キューブリック監督の『ロリータ』が描くホテル的空間を分析するための予備研究として、同作の映画脚本にまつわる夢のイメージを考察した。千代田は、6月にトゥールーズ大学でおこなわれた15th International F. Scott Fitzgerald Society Conferenceに参加し、Fitzgerald's 'Placelessness' and the Gothicの題で、ホテル的トポスへの展開を考慮しつつ、「寄生(パラサイト)」というテーマからフィッツジェラルドのゴシック性を論じた。 3月には勉強会を開催し、後藤の成果発表を中心とした意見交換会と今後の研究方針やワークショップや出版企画についての流れを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナとオンライン授業の準備等のせいで、池末と渡邉の研究は全体としてやや遅れている。池末は、2月及び3月に予定していた、国内調査旅行及び国外調査旅行が中止となったため、引き続き「南部」との関連性でホテル表象を考察するための文献資料調査が停止し、予定していたフロリダ州立大学での意見交換会も無期延期の状態となっている。渡邉も同様に国内外の調査旅行が不可能となった。後藤、千代田の研究は概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
池末は、ポーやジェイムズを中心とする19世紀から20世紀の作家におけるホテル表象の「語り」に着目して分析をおこない、論文を執筆する。渡邉は、ベロー、カポーティ、ミルハウザー、パワーズ、オースター、アーヴィングなど、現代アメリカ文学を特徴づけるホテル的表象、並びにそうした空間における多様なイベントの特質について引き続き考察を深めるとともに、ミルハウザーの『マーティン・ドレスラー』に描かれたホテル表象について論文を執筆する。後藤は、今年度の研究発表を基盤とした論文を日本アメリカ文学会の学会誌および日本ナボコフ協会の協会誌にて発表を予定している。千代田は、ハーレム・ルネサンス文学における「キャバレー」や「レント・パーティ」をモダニズムにおけるもうひとつのホテル的現場として位置づけ、作品解釈を行う。また『グレート・ギャツビー』におけるギャツビー邸に付されるホテルのイメジャリおよびそこから引き出される「歓待」と「非・異性愛」のテーマについても考察する。いずれも共著として発表する予定である。さらに前述のハーレム・ルネサンス作家や白人男性モダニズム作家につづいてイーデス・ウォートンについても、そのホテル表象も含め、考察をおこなう予定である。 共同発表として、アメリカ文学会関西支部シンポジウム(10月24日予定)において、シンポジウムをおこない、これまでの研究成果を発表するとともに今後の課題を回収し、勉強会を重ねながら、成果を論集の形で出版する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、2019年度末に予定していた池末、渡邉の国内外調査旅行が概ね中止となり、国内外旅費が支出できなかったため。2月以降移動を自粛して、互いに主にオンライン上で情報交換しながらできる座学での研究を中心とする方向に切り替えることになった。そのため、図書費等の支出が予定より増額となり、池末の旅行予定費用の一部は次年度に繰り越しとなった。コロナ禍収束の状況に留意しながら、調査旅行は今年度後半あるいは来年度におこなう予定である。また、まだ定かではないが、千代田が企画していた連続講座についても、2020年度後半以降に延期となる公算が大きい。
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