2021 Fiscal Year Research-status Report
第一次大戦期の思想潮流から見る20世紀初頭のイギリスの児童文学、舞台芸術
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19K00407
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
岩井 学 甲南大学, 文学部, 教授 (70369859)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 第一次大戦期イギリスの戯曲 / D. H. ロレンス / 『スターライト・エクスプレス』(1915) |
Outline of Annual Research Achievements |
第一次大戦終結間際にD・H・ロレンスにより執筆された戯曲『一触即発』(Touch and Go)に当時の思想潮流やイデオロギーがどのように読み取れるか、登場人物の描写、とりわけ階級表象を中心に分析した。炭坑経営者の第一世代は、典型的なヴィクトリア朝的博愛主義者として風刺的に描かれている。また第二世代は、二〇世紀初頭に流布した中産階級の典型的なイメージで自分たちが見られていることを意識している。また彼らは労働者階級を見下し、差別と偏見の眼差しを向けるが、彼らが抱くイメージは、当時の典型的な労働者階級の表象とは異なり、作者と近い視点で見ているように思われる。最も興味深いのは労働者階級である大衆の描かれ方である。かれらは一方で暴徒として登場しながら、同時にギリシア悲劇におけるコロスのような役割を与えられている。 労働者階級のこの二律背反的イメージは、これまで分析してきた第一次大戦期のイギリスにおける他の作品にはあまり見られない。今回見いだされたこの点を足掛かりにすることで、第一次大戦期の他の戯曲やポピュラーフィクションにおける階級表象とイデオロギー、また当時の社会思潮との共振性を見いだすことができる可能性があると考えている。この角度から、大戦期の戯曲やポピュラーフィクション、とりわけアルジャーノン・ブラックウッド (Algernon Blackwood) 原作、ヴァイオレット・パーン (Violet Pearn) 脚本、エルガー (Edward Elgar) が音楽を付けた児童演劇『スターライト・エクスプレス』 (Starlight Express) の分析を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により海外渡航ができず、必要な資料収集や学会活動が出来ない状況であった。またコロナ対応のための大学業務の増大により、十分な研究時間の確保が難しかった。今後はだんだんと平常化していくものと思われるので、挽回できるよう力を尽くしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
先述のようにこれまではコロナによる研究機会/研究時間の確保が難しかったが、だんだんと学会活動などにも参加できるようになってきた。今年度は国際学会での発表を計画している。またイギリスへの資料収集の機会は今年度も得られそうにないが、国内で収集できた資料を元に論文を仕上げたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、海外への資料収集、学会参加ができなくなり、予定していた旅費を執行できなくなったため、差額が生じることとなった。今年度は延期されていた学会が開催される予定なので、学会参加のための旅費に充当する予定である。
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