2020 Fiscal Year Research-status Report
第一次世界大戦終結100周年のために:21世紀英語文学と他者の記憶/記憶の他者
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19K00417
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
霜鳥 慶邦 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (10400582)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 第一次世界大戦 / 英語圏文学 / イギリス / アイルランド / カナダ / オーストラリア / ベルギー / パキスタン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の最大の成果は、これまでの研究を単著書『百年の記憶と未来への松明[トーチ]:二十一世紀英語圏文学・文化と第一次世界大戦の記憶』(松柏社、2020年)として出版したことである。 本書の最大の特徴と意義は次の2点である。1つ目は、英語圏を中心とする複数の国(イギリス、カナダ、オーストラリア、アイルランド、パキスタン、ベルギー)の文学と文化を国境横断的に射程に収めると同時に、大戦当時のカナダ先住民、中国人労働者、アラブ兵、インド兵、アフリカ先住民といった、大戦の記憶において周縁化・忘却されてきたさまざまな存在に光を当てることで、大戦研究のグローバル化に貢献することである。2つ目は、大戦の記憶と、今世紀のさまざまな事象(9/11をはじめとするテロ事件、イラク戦争、アフガニスタン戦争、シリア情勢、移民・難民問題、イギリスのEU離脱問題など)との密接な関係を明らかにすることで、大戦の記憶が、私たちの生きる21世紀においていかに重要なアクチュアリティに満ちた問題として存在し続けているかを示すことである。また、著者が現地調査によって撮影してきた世界各地の戦跡・記念碑・ミュージアム・墓地・式典の写真を掲載し、最新の視覚的情報も豊富に提供することで、研究者から一般読者まで、幅広い読者層に大戦研究の重要性をアピールできるように工夫した。本書に対して、公益信託福原記念英米文学研究助成基金(通称「福原賞」)出版助成部門が授与された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在進行中の研究テーマを、これまでの研究成果と組み合わせて、単著書としてまとめることができたため、おおむね順調に研究を進めることができたと判断する。ただし、本研究課題の成果の一部を単著書に含めたため、本研究課題の成果全体をどのようにまとめるか、再検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き第一次世界大戦における周縁的存在に注目して研究を進めていく予定であるが、新型コロナウィルスの影響により、現地調査がきわめて困難なため、状況を慎重に考慮して、研究計画を検討していきたい。また、本研究課題の成果の一部を単著書に含めたため、本研究課題の成果全体をどのようにまとめるか、再検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響のため、現地調査を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。これについては、翌年度に、可能であれば現地調査費用の一部として活用したい。それが難しい場合は、文献の購入に有効に活用したい。
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