2021 Fiscal Year Research-status Report
18-19世紀の英国小説の語彙と文体:社会における人の認知と言語変化の観点から
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19K00419
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松谷 緑 山口大学, 教育学部, 教授 (70259737)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 英国小説 / 近代英語 / 語彙 / 英語史 / 認知 / 意味変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英語という言語の通時的視点を持ちつつ、小説のテクスト解釈に踏み込んだ語彙の解明を目指すものである。作品が著された当時の英語の言語体系と社会背景のもと、作家の言語がどのように機能したのかを探る。語の意味変化は、語彙体系自体の持つ内的・外的な要因もさることながら、社会的な価値観を反映するものである。時代における社会背景や人びとの考え方といった言語外の要因が言語に与える影響は大きい。好ましい意味から好ましくない意味へ、あるいは、その逆に、好ましくない意味から好ましい意味へ、その用いられ方が変化していく過渡期にある語彙が小説においてどのように用いられているのか分析を試みる。 例えば、condescensionという語は現代英語のコーパスからは好ましくない意味が普通だが、18世紀から19世紀には、好ましい意味も好ましくない意味も潜在的に持つ過渡期にあり、発話のコンテクストにおいてその評価的意味が決定する。その際、特に、発話者と言及されている相手の社会的地位が影響する(Hanks 2013:162)。こういった語の使用の実際はその含意において、好ましい意味か好ましくない意味かの両極の狭間で揺れ、曖昧な場合もある。論文「語の通時的意味と意味の重層性:Jane Austenの小説にみるamiable, sad, condescensionの評価的意味」では、評価的意味の変化の過渡期にある語が如何に効果的に用いられ、小説において、登場人物の人物像の形成やアイロニーの構築に機能しているかを明らかにすることに取り組んだ。 『Emma』第3巻について進行中の作業は、当初の計画より遅れているが、テクストの注釈の記載内容については、一通りの検討を済ませ、全般にわたる最終的な検討と説明文言のチェックに入っている。また、索引については既に1巻と2巻のデータを整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症の全国的な拡大のため学会や研究会が開催されない時期が長くあったが、ようやくこの1年ほど、オンライン等でミーティングが行われるようになった。とはいえ、ブランクの時期の影響は大きく、また、大学の授業等での業務の負担についてはオンライン等での対応も含め引き続き増えたままで、研究計画において予定通りの状況とはなっていない。 研究のための時間が極めて限られたため、当初予定していた図書等の購入や検討ができなかった。時間を確保し、図書等資料の購入と検討を鋭意実施する。また、予定していたデータ収集が計画通り進まずその整理のためにあてていた人件費等は消化できていない。 次年度は、Zoom等も利用し学会や研究会への参加とデータの収集・整理の時間を確保するようにする。
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Strategy for Future Research Activity |
研究のための時間を確保し、引き続き、当初計画において予定していた扱うべき語彙リストについて、研究を進める。2021年度までに検討ができなかった、図書等資料の購入と検討を鋭意実施する。また、オンラインも利用し学会や研究会へ参加する時間を確保する。データの収集・整理については、『Emma』3巻の注釈内容が固まり次第索引を作成し、1巻・2巻とともに取りまとめる作業を優先的に行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の世界的な拡大のため計画当初予定していた出張が全くできなかった。オンライン対応を含め大学の授業での負担増や他の業務との兼ね合いで研究のための時間が極めて限られたため、当初予定していた図書等の購入や検討ができなかった。時間を確保し、図書等資料の購入と検討を鋭意実施する。予定していたデータ収集が計画通り進んでいないためその整理のためにあてていた人件費等が消化できなかった。次年度は学会や研究会への参加とデータ収集と整理の時間を確保するようにする。
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Research Products
(3 results)