2020 Fiscal Year Research-status Report
White-life Novels in the Post-WWII Period and the African-American Literary Tradition
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19K00420
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
永尾 悟 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (80389519)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカ系アメリカ文学 / 白人性(ホワイトネス) / ホワイトライフ小説 / ブラック・ライヴズ・マター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アフリカ系アメリカ人作家による白人主人公の小説、いわゆる「ホワイトライフ小説」について、20世紀転換期の先駆的作品の流れを踏まえながら、隆盛期とされる第二次世界大戦後の作品を読み解き、同時代の人種言説との呼応性と文学的伝統との交差性を探るものである。その際、当時の雑誌や文学研究書などを紐解き、この時代におけるアフリカ系アメリカ文学をめぐる批評的意識とホワイトライフ小説への評価を検証する。 2020年度の成果として、James BaldwinのAnother Country(1962)をホワイトライフ小説として読み、黒人男性Rufus Scottの突然の投身自殺をきっかけにして、白人登場人物が黒人の生命をどのように受け止めるのかを考察した。この内容をまとめたものを、雑誌論文として発表した。また、Richard Wrightの自伝的小説Black Boy(1945)/American Hunger(1977)における黒人作家のアイデンティティ構築の問題を作品の構想から執筆、出版までの過程を辿りながら論じた。この内容は、ブラック・ライヴズ・マター運動を特集した論文集に収録された。 2021年度の研究の準備として、Zora Neale HurstonのSeraph on the Suwanee(1948)に関する文献資料を収集し、Hurstonの作家としてのキャリアにおいてこの作品が持つ重要性について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は複数の論文を執筆することができたが、予定していたアメリカでの研究調査について、COVID-19の感染拡大に伴う渡航制限によって中止せざるを得ず、作家たちの作品執筆の動機を裏付ける資料が入手できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の計画としては、Zora Neale Hurstonのホワイトライフ小説Seraph on the Suwanee(1948)に関する研究、そして、James BaldwinのGo Tell It on the Mountain(1953)についての研究を行う。 Zora Neale HurstonのSeraph on the Suwaneeについては、黒人作家としてのHurstonの自己表象の観点から南部白人を主人公とするこの物語を当時の人種言説を踏まえつつ読み解きたい。 James BaldwinのGo Tell It on the Mountainについて、この作品はホワイトライフ小説ではないが、彼がこの作品と同時進行でGoivanni's Room(1956)などの白人主人公の小説を執筆していたことから、Baldwinの白人性表象の萌芽を読み取ることを目的としている。 HurstonおよびBaldwinについては2021年度に論文執筆の準備に着手し、遅くとも2022年度中の出版を目指す。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していた学会発表およびアメリカでの研究調査がCOVID-19感染拡大によって実施できなかったため、旅費に大幅な残額が生じた。また、海外から取り寄せ予定だった研究書や資料について、発送元や出版者の事情により年度内に入手出来なかった。 アメリカでの研究調査については本年度も実施出来ない可能性が高いが、国内での学会発表については実施する予定である。また、入手予定の研究書や資料については2021年度中に納品される予定である。
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