2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00423
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
出口 菜摘 京都府立大学, 文学部, 教授 (80516138)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | T. S.エリオット / 正典の形成 / 大戦間期 / モダニズム / プリント・カルチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、プリントカルチャー(メディア戦略)、第一次世界大戦の勃発と大戦間期、イギリスからアメリカへの覇権の移動、という3点から、モダニズム文学の形成とモダニズム文学の概念を再検討・再構築することである。本研究が提示する視座において、これまで個別に発展したと思われてきたモダニズム文学史とメディア史、地政的変動を接続することとなり、新しいモダニズムの相貌を提供する普及効果の高い研究となると考えている。 この研究テーマのもと、2019年度は、T. S. エリオットの作品・評論、文芸活動を中心に分析をすることで、モダニズム文学、特に文学キャノンが形成されるプロセスを考察した。具体的にはエリオットの未完の詩「凱旋行進」(“Triumphal March”)と「政治家の困難」(“Difficulties of a Statesman”)の両作品が、エリオットの詩人として文化的戦略と、戦間期のダイナミズムの結節点となる作品であることを明らかにした。未完の詩という性格ゆえに、エリオット研究において論じられることが少ない両作品に、当時の言語状況が反映されていることを指摘した意義は大きいと考えている。 メディア戦略については、大西洋と太平洋を跨いで張り巡らされた文化的ネットワークの見取り図作成に注力した。そエリオットが主幹した『クライテリオン』が、冷戦期においてどのような役割を果たしたかを考察し、同誌の持つ特性を逆照射した。その成果の一部は、日本アメリカ文学会全国大会シンポジウムにおいて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、おおむね順調に進展している。2019年度は、日本カナダ文学会全国大会においての研究発表、日本アメリカ文学会全国大会のシンポジウムにおいて、パネリストのひとりとして参加し、研究成果を発表する機会を得た。フロアからのフィードバックにより研究の精度が上げることができたこと、また、他のパネリストからプリントカルチャーに関する情報や視座を得たことは大きな前進であった。 しかし、新型コロナウィルスのために、年度末に予定していた大英図書館における資料調査を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究成果を踏まえ、「プリントカルチャー(メディア戦略)」を中心に研究を進める。
・The Criterionと他のリトルマガジンに掲載された政治動向を論じた記事と寄稿者の分析 ・Faber & Faber 社における T.S. Eliot の詩人/編集者としてのインターナショナル・モダニズム形成の戦略について
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルのために、在外研究を実施することができなかったため。
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Research Products
(3 results)