2019 Fiscal Year Research-status Report
19世紀イギリス小説における女性の願望のプロットとテクストの権威の転覆の研究
Project/Area Number |
19K00425
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 淳 東北工業大学, 共通教育センター, 准教授 (10552755)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 女性の願望 / ナラティブ / ゴシック / センセーション小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究では、研究期間全体の大きな研究目的である「男性の物語に登場する女性の願望による男性のテクストのナラティブの権威の転覆」というテーマに関して、一方では、交付申請書にも記載したウィルキー・コリンズのセンセーション小説である『バジル』の研究を進めながら、もう一方では、同時にほかの作家(トマス・ハーディ)の作品や、とくに小説だけではなく詩についても同様のことが起きているのではないかという仮説を立てて研究を行った。それにより、男性がテクストの中で作り上げようとしている自身の物語が、女性を利用し、抑え込むのではなく、逆にテクストに登場する女性によって、その男性の物語が女性たちの願望を述べる場として利用されていることが明らかになった。ハーディの詩の研究では、詩の中に見られる実際の「女性の幽霊の声」に注目することで、より男性のテクストの中の女性の願望の存在が明らかになったと思われる。この研究成果については、2019年11月23日に開催された日本英文学会東北支部第74回大会のシンポジウム(テーマ:「英米文学のなかの女性の声を再考する」)において口頭での報告を行った。 また、コリンズの小説の研究については、先行研究を調べるうちに、新たに「郊外」とゴシックの関係についての研究も本研究テーマには必要であることが分かった。そこから、男性のリアリズムの物語を崩す「郊外」における女性の願望のゴシックの物語というテーマを進めることで、より大きな研究成果が得られるのではないかと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗状況については、当初予定していたコリンズの小説の研究だけでなく、ハーディの詩の中に見られる女性の声による女性の願望の研究についても行い、学会シンポジウムで口頭発表もできたため、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、次年度の研究課題であるトマス・ハーディの小説についての研究を始めながら、一方では、コリンズの『バジル』についての研究成果を口頭発表および論文の形にまとめたい。その際には、女性の願望というテーマに新たに「郊外」とゴシックという要素も組み入れながら、論を進めていきたいと考えている。そのためには、書籍の購入や全国の大学図書館などを利用して必要な資料の収集を急ぎたい。
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Causes of Carryover |
当初は行く予定だった学会の研究発表内容やシンポジウムのテーマが今回申請した研究内容とはあまり関係がなかったため、学会に参加しなかったことが旅費をあまり使用しなかったこととなった。また、研究期間の後半は国内や海外に書籍を発注してよいものかどうかの判断に迷ったため、あまり新たな資料の収集ができなかった。翌年度分と合わせた使用計画については、おそらくは次年度も学会や研究会などの開催が危ぶまれるため、その分も書籍の購入や論文作成に必要な消耗品などに使わせていただきたいと考えている。
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