2021 Fiscal Year Research-status Report
19世紀イギリス小説における女性の願望のプロットとテクストの権威の転覆の研究
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19K00425
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 淳 東北工業大学, 総合教育センター, 准教授 (10552755)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | センセーション小説 / ハーディ / ニューウーマン小説 / コリンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究実績の一つは、2021年7月17日(土)にオンラインで開催された第16回東北ロマン主義文学・文化研究会のシンポジウムで「欲望の場としての郊外―『バジル』におけるセンセーション―」と題して行ったウィルキー・コリンズについての研究発表である。この研究発表では、ロンドンではジェントルマンである語り手が自分の物語を語る上で主導権を持っていたが、郊外においては物語を語る主導権が主人公である語り手から他者へと移り、語り手は父親をめぐる他者の復讐物語や女性の欲望の物語を構築する一部となっていることを論じた。また、その物語では、語り手自身に潜む「狂気」も露呈されることになる。これまで郊外は「理想の場所」とみなされてきたが、本発表では郊外が理想の場所などではなく、ジェントルマンの家庭の秘密が露呈される場であり、その社会的アイデンティティを崩す恐れのある「センセーショナルな場所」であることを明らかにした。 その他の研究実績については、昨年度からの継続でトマス・ハーディの小説であるFar from the Madding Crowd、およびニューウーマン小説作家であるモナ・ケアードの短編小説について資料収集と研究テーマの考察を行った。ハーディ小説については、ダーウィンの性選択の理論という側面から引き続き研究を行った。また、ケアードの小説の研究については、研究ノートの作成が終わり、論文の執筆を開始することができた。その研究成果については、2022年度のうちに論文として発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナの影響で資料が集まらなかった前年度分の研究内容がやや遅れ気味であるが、その研究に関しては新たな視点からの考察の必要性も明らかになったため、その点も合わせて次年度に遅れを取り戻したいと考えている。一方、当該年度に行ったもう一つの研究内容については十分に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、コリンズの小説について研究会で行った発表原稿をもとに論文を作成する予定である。また、ニューウーマン小説の研究に関する論文についても2022年度のうちに完成させ、大学の紀要に投稿する予定である。一方、ハーディのFar from the Madding Crowdについては、資料収集と考察を継続し、そちらについても論文の作成を急ぎたい。また、2022年度の研究課題であるハーディの小説The Well-Belovedについての研究についても必要な資料収集と考察を進める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は、当該年度もコロナの影響で予定していた学会のための旅費使用がなくなったためと、一部の研究にやや遅れが生じていることによる。使用計画としては、その部分の研究資料の追加購入に使用したいと考えている。
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