2020 Fiscal Year Research-status Report
Rethinking Windrush in African-Caribbean immigrant women writers
Project/Area Number |
19K00430
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
岩瀬 由佳 東洋大学, 社会学部, 教授 (60595411)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ウィンドラッシュ/ポストウィンドラッシュ世代 / イギリスにおけるカリブ系女性移民作家 / ファミリー・ヒストリー / ジェンダー・スタディー / Andrea Levy / Pauline Melville |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、主にウィンドラッシュ以後のイギリスに活動拠点を持つアフロ・カリブ系移民作家に焦点を当て、これまで、男性中心主義的であるとされてきたウィンドラッシュ世代の文学観からの転換、新たな視点でアフロ・カリブ系女性作家たちの作品を読み解き、正当に評価されることが少なかったウィンドラッシュ世代とそれ以後のカリブ系作家たちによる文学活動の再構築を目指すことを趣旨としている。具体的には、Una Marson, Louise Bennett, Beryl Gilroy, Pauline Melville, Andrea Levy, Valerie Bloom, Hannah Loweらの活動、作品分析を対象としている。 本年度は、コロナ禍の影響により、比較的、資料が入手しやすかったAndrea LevyとPauline Melvilleの作品を中心に研究を進めた。特に、Andrea Levy原作の舞台、Small Islandの映像を限定的に特別公開されていたYouTube上で視聴することができ、文学作品とパフォーマティブな舞台との比較検討を行うことができたのは、非常に意義があったと考えている。Pauline Melville作品における、カリブ系移民のディアスポラ的状況と移民先での労働問題に着目し、特に、社会の下層に生きる移民の闇を抽象と幻想との間に描き出す手法を通じて、ある種モダニズム的ではあるが、同時に想起されるリアリスティックな世界観を生み出す効果が明らかになった。 また、ガイアナ生まれで幼少時にロンドンに移住したPauline Melvilleとジャマイカ人両親が実際にウィンドラッシュ号に乗っていたとされる、ウィンドラッシュ第二世代であるロンドン生まれのAndrea Levyを比較した場合、やはり植民地と宗主国の関係性を捉える上での認識に差異があり、「家族」関係を描く上でもその影響が伺えることから、引き続き、詳細な分析を行う必要性があると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍の影響により、当初の予定通りに、研究を進めることが全くできない状況に陥り、非常に残念であった。特に、参加予定であった、海外、国外での学会が軒並み中止となったため、研究発表や海外研究者たちとの議論の機会をを失うだけでなく、予算を組んでいたイギリス大英図書館でのリサーチ作業等も中止せざるを得ないことになった。そのため、国内で収集できる図書、論文資料などを中心に、精読作業を行うことにした。入手できる資料が限定的ではあるが、丹念に読み込み、分析することに集中できたと考えている。 2020年度後半から、海外発信のオンラインによる学会、研究会などにも参加できるようになったり、ウィンドラッシュ世代に関心のある研究者、活動家たちともボーダーレスに交流が可能になってきた点は、有意義な点である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、コロナ禍の影響が、ある程度続くと想定されるため、海外での文献収集やフィールドワークを2022年の3月以降、2023年度に集中して行う必要があると考えている。渡航が難しい期間は、海外のリモート研究会や学会に積極的に参加し、海外の研究者との意見交換をしていきたい。 また、多様な資料分析と検討作業を十分に行なった後に、論文を執筆したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響のため、2020年度に予定していた海外研究、国内外の学会参加を実施することができなかった。それにより、2021年度にその分の予算を繰り越し、コロナウィルスの感染状況をみて、2022年3月以降の海外研究(文献収集、現地でのフィールドワーク等)、海外での学会発表の旅費に使用したいと考えている。
|