2019 Fiscal Year Research-status Report
ロマン主義時代の文学作品に見られるウォレン・へースティングズ表象
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19K00439
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 美津子 東北大学, 国際文化研究科, 名誉教授 (60073318)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウォレン・ヘースティングズ / エドマンド・バーク / 弾劾裁判 / 帝国主義 / 東インド会社 / ネイボブ / ジェイムズ・ギルレイ / 植民地主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的 は、ロマン主義時代に活躍したSydney Owenson、Thomas Moore、Robert Bage、Richard B. Sheridanなどの作品を取り上げ、Warren Hastings自身、東インド会社(Hastingsが最高責任者)、インド帰りの富豪ネイボブ (Hastingsもその一人) が作品中でいかに表象されているのかを考察することである。 Hastingsはインドの支配体制を樹立し、帝国建設の最大の功労者であったが、総督在任中のインド統治が過酷であったと批判され1788年 に弾劾に付された。弾劾裁判は当時大変な関心を集め、Hastingsを擁護する者と批判する者の間で激しい論争が繰り広げられた。Hastingsの仇敵Edmund Burkeの弾劾演説、政治論評、Robert Ormeの旅行記など多様な言説、そしてJames Gillrayの諷刺画などを援用して、Hastings表象の背後に潜む政治意識、民族意識、宗教意識を浮き彫りにすることを目指した。 今年度の仕事は論文1本と学会発表2回である。論文「ロバート・ベイジの『美しきシリアの人』に見られる異国表象─北アメリカ植民地、アイルランド、フランス、オスマン帝国」では、インド亜大陸と同様イギリスの植民地支配下にある北アメリカ植民地とアイルランドの異国表象に焦点を当て、Bageの政治的意図を分析した。学会発表「オーエンソンの『アテネのイーダ』に描かれたギリシア、オスマントルコ」においては、ギリシアを植民地支配していたオスマン帝国がいかに表象されているのかに的を絞り、Owensonの政治信条を検証した。「トマス・ムーアの『ララ・ルーク』に見られるインド表象」では、『ララ・ルーク』におけるインド表象を手掛かりにして、Mooreがインドへの帝国主義的侵略をいかに捉えていたのかを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウィルス感染拡大に伴って、3月に予定していたダブリン出張が急取りやめになったことにより、文献収集は多少遅れを取っている。学会発表や論文執筆は順調に進んでいる。来年度は、今年度学会発表を行ったロバート・ベイジ論、トマス・ムーア論を執筆する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度とほぼ同じ手順でおこなう予定である。(1)本研究課題に密接に関わる作品を大英図書館、ケンブリッジ図書館などから、 マイクロフィルムや可能であればフォート・コピーの形で取り寄せる。18世紀関係の文献の場合は、ECCOでダウンロードすることも ある。(2)取り寄せたマイクロフィルムは現像し、製本して読みやすい形態にする。(3)製本した作品を精読し、分析結果をカードに取り、必要に応じてデータをパソコンに打ちこむ。(4)ヘースティングズ表象の際だった点を明確化するため、ロマン主義時代に刊行された旅行記、論評などを多数入手し、精読し分析する。(5)イギリスに資料収集に赴き、文献のさらなる充実を図る。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、コロナウィルス感染拡大に伴い、3月に予定していたアイルランドのダブリン出張や、大阪で開催される予定だった学会が中止になったことによって発生したものである。今年度の未使用額と、令和2年度請求額の合計金額を、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。 (使用計画) 今年度発生した未使用額と令和2年度請求額は、大英図書館等に資料集に出かけたり、文献収集、文献複写、国内で開催予定の関連学会に出席するために使用する予定である。
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