2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Representations of Miners and Northern England in Contemporary British Drama
Project/Area Number |
19K00440
|
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
大西 洋一 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (10250656)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 北イングランド / 労働者階級 / 炭坑労働者 / 炭鉱 / 炭鉱ストライキ / 炭鉱演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、引き続き北イングランド等の炭鉱労働を扱った演劇作品を収集してその内容を検討するとともに、炭鉱業の歴史および絵画作品における炭鉱労働の表象の調査も行なった。 まず後者に関してであるが、昨年度研究発表を行なった「「炭鉱」の文学(前)史 ─19世紀における炭鉱および炭鉱労働者の表象─」を論文にまとめるにあたって、炭鉱業における技術的発展や労働状況の変化を様々な資料を収集して確認した。そして、当時の炭鉱労働者(女性労働者を含む)が視覚芸術においてどのように表象されていたかを調べるために絵画に描かれた炭鉱労働の系譜もあわせて調査した。当該論文は2023年度に投稿する予定であるが、この調査の一成果として、産業革命期の炭鉱労働者を描いた代表的な絵画であるジョージ・ウォーカー作《第三図版 炭鉱夫》(『ヨークシャーの衣服』(1814)所収))に関する短文を東北ロマン主義文学・文化研究会のウェブサイトに寄稿した。これらの歴史的背景の調査は、今後19世紀から20世紀にかけての炭鉱演劇を論じる際の重要な土台となる予定である。 また、ウェールズおよび北イングランドの炭坑労働者を扱った20世紀の演劇作品として、2021年に英国のナショナル・シアターで再演されたエムリン・ウィリアムズ作『小麦は緑』(1938)や、(元)炭坑労働者を登場人物としたリチャード・キャメロンの1990年代の一連の戯曲などを収集した。これまで各時代の「炭鉱演劇」を広く渉猟することで、あらためてイングランド北東部の炭鉱業の歴史を炭坑労働者の家族の物語に絡めて描いたアラン・プレイター作『石炭小屋のドアを閉めろ』(1968)が示す歴史的視座の重要性を再認識したため、この作品が提示した「炭鉱労働」の歴史的見取り図を縦糸にして様々な作品を考察することにより、最終的に「炭鉱演劇」の系譜を作ることを目標としたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度も、当初の新型コロナウイルス感染症蔓延に基づく渡航制限により海外調査を見送ったため、英国出張を行って未刊行資料などを収集することはできなかった。また、国内で集めた資料に関しても十分時間をとって検討し、その研究成果を本年度中に論文にまとめることができなかったためにさらなる研究期間の延長を申請せざるを得ず、そのため全体的な進捗状況は「やや遅れている」と言わざるを得ない。 次年度は最終年度となるため、海外の研究機関や文書庫への訪問による資料収集にこだわらずに、これまで国内で収集した20世紀(および19世紀)の炭鉱および炭坑労働者の演劇表象に関する文献の検討に重点を置きたい。とりわけ、アラン・プレイターの炭鉱演劇とその再演に見られる炭鉱労働の歴史、19世紀メロドラマにおける炭鉱と炭坑労働者の表象、そして「1984-85年炭鉱ストライキ」に関する同時代の演劇に関しては、順次論文として発表したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究の推進方策として、英国演劇に関するデータベースやオンライン・コレクション(「ドラマ・オンライン」や「ザ・ステージ」のバックナンバーのデータベース)の使用や、北イングランドの主要劇場および劇作家に連絡を取って資料の提供を依頼することなどを挙げていたが、どちらも準備不足で実行できなかった。そのため、最終年度である2023年度はできる限り早期に上記の方策を可能なものから実行したい。とりわけ、本研究にとって重要な未刊行の戯曲(バリー・ハインズ作『ストライキの後で』や炭鉱ストライキを支えた女性団体「炭鉱閉鎖に反対する女性たち」に関する戯曲など)を確認した上で、関連各所に照会してできるだけ早く入手できるよう努めたい。その上で、これまで入手した北イングランドおよび炭坑労働者に関する文献資料とともに十分に調査・分析して、口頭発表または論文として発表したい。
|
Causes of Carryover |
英国出張による未刊行資料の収集等を断念せざるを得なかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、英国への海外出張旅費として使用するか、英国からの一次資料の取り寄せ、または英国演劇に関するオンライン・データベースやオンライン・コレクションの利用料として支出し、本研究の締め括りに活用したい。
|