2019 Fiscal Year Research-status Report
現代ヨーロッパ文学におけるカタストロフィ表象についての総合的研究
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19K00442
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
対馬 美千子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90312785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 真理子 青山学院大学, 経済学部, 教授 (50190228)
田尻 芳樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20251746)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サミュエル・ベケット / カタストロフィ / 現代ヨーロッパ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.令和元年度は、小説、演劇、思想のセクションごとに、現代ヨーロッパ文学におけるカタストロフィ表象についての資料や文献の収集・整理を行い、さらにそれらの分析を行った。以下セクションごとに見ていく。小説セクション(田尻):20世紀最大のカタストロフィとも言える核兵器の開発と広島、長崎での実戦使用が、第二次世界大戦後のヨーロッパ及びアメリカの大衆的想像力の中にどのような影響を及ぼしたかについて、特に宇宙人による地球侵略や怪獣を主題とした映画との関係について考察し、さらに日本におけるそうした文脈を踏まえつつ三島由紀夫の小説『美しい星』について論文を執筆した(2020年刊行予定)。演劇セクション(堀):カタストロフィ後の世界を描きつづけたベケットの数ある作品のなかでも代表作といえる『エンドゲーム』の主人公ハムが、天災で出会った人びとから助けを求められながら助けなかったことによって死に至らしめた自身の罪意識に苛まれ、それをクロヴに語ることによって自身を正当化するという、揺れ動く心理状態を表わしている点に焦点を当て、作品を分析し、論文にした。思想セクション(対馬):ベケットの『エンドゲーム』にあらわれるカタストロフィの時間性について、ナンシーの『フクシマの後で』の議論を通して考察し、国際会議で発表を行った。また、現代ヨーロッパ文学、とくに『エンドゲーム』において、カタストロフィ後の人間の共同性のあり方がいかに表象されているかについて、ナンシーを中心とする現代の共同体論を参照しながら考察し、論文を執筆した。 2.12月にTrish McTighe氏(Queen's University Belfast)を招聘し、青山学院大学で、現代ヨーロッパ文学におけるカタストロフィ表象についての国際共同研究遂行のため、研究の打ち合わせを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、令和元年度に計画されていた(1)研究資料の収集・整理、(2)セクションごとの分析、(3)研究打ち合わせの会合における海外研究者との意見交換のすべての点において、計画通り順調に作業が進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、以下の作業を進める計画である。(1) 研究資料や文献をさらに充実させ、入手した資料や文献のリストの整理を行う。(2)前年度に引き続き、セクションごとに現代ヨーロッパ文学におけるカタストロフィ表象の問題について様々な角度から分析を行い、考察を深める。(3)各研究者は、国内外の学会で、それまでの研究の成果を発表する。(4)研究叢書(執筆言語は英語)として英語圏の出版社から出版するための準備を行う。
令和3年度は、過去2年間の研究活動を通して得られた成果を全体としてまとめあげる。その延長線上で以下の作業を進める。 (1)シンポジウム形式の公開の研究会を開催し、それまでの研究成果を提示する。(2) 3年間の研究成果を論文集の形でまとめ、研究叢書として英語圏の出版社から出版する。
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Causes of Carryover |
(理由) 購入した書籍が予定していた金額よりも安価であったため、残額が生じた。 (使用計画) 令和2年度の書籍の購入にあてる計画である。
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Research Products
(7 results)