2021 Fiscal Year Research-status Report
現代ヨーロッパ文学におけるカタストロフィ表象についての総合的研究
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19K00442
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
対馬 美千子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90312785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 真理子 青山学院大学, 経済学部, 教授 (50190228)
田尻 芳樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20251746)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サミュエル・ベケット / カタストロフィ / 現代ヨーロッパ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.令和3年度は、前年度に引き続き、小説、演劇、思想セクションごとに、現代ヨーロッパ文学におけるカタストロフィ表象についての資料や文献の収集・整理を行い、様々な角度から分析を行い、考察を深めた。 小説セクション(田尻):共同編集している論文集Samuel Beckett and Catastropheのために‘Catastrophe and Everyday Life in Samuel Beckett’という論文を執筆し、『エンドゲーム』を始めとするベケット作品における核時代の脅威と日常生活の関係について、近年のモダニズム文学と日常性の研究の成果を踏まえつつ考察した。演劇セクション(堀):主としてエコロジーという観点からベケット作品を分析する作業を行なった。日本英文学会関東支部の学会誌に寄せた論文「Waiting for Godotにおける『存在の不安定さ』」では、昨今のエコロジー理論を用いてWaiting for Godotを分析した。また、エコロジーを念頭に置くフェミニズム批評を用いて、ベケットの後期戯曲Catastropheを分析した論文を、本科研メンバーが編集中のSamuel Beckett and catastropheに向けて執筆した。思想セクション(対馬):ベケット作品における「灰色」と事後性の問題を考察することを通して、ベケットとカタストロフィ表象について検討した。その際、ジャン=リュック・ナンシーの「あとで」という概念を参照した。また、ベケットのラジオ劇All That Fallにおける日常の問題についてモーリス・ブランショによる「日常」の理解を通して考察した。 2.これまでの研究成果を論文集の形でまとめ、研究叢書としてPalgrave Macmillan社から出版するための作業を行った。主に、執筆者の原稿の編集、イントロダクションの執筆などを中心に進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の成果である論文集の刊行については、最初の編集作業は完了したが、刊行までには時間がかかるため、予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
論文集の刊行のため、出版社Palgrave Macmillan社と交渉しながら、最終の編集作業を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していた研究者の招聘ができなかったため、また、購入した物品が予定していた金額より安価であったため、残額が生じた。
令和4年度の書籍購入にあてる計画である。
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