2022 Fiscal Year Annual Research Report
現代ヨーロッパ文学におけるカタストロフィ表象についての総合的研究
Project/Area Number |
19K00442
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
対馬 美千子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90312785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 真理子 青山学院大学, 経済学部, 教授 (50190228)
田尻 芳樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20251746)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サミュエル・ベケット / カタストロフィ / 現代ヨーロッパ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際共同研究の成果を論文集Samuel Beckett and CatastropheとしてPalgrave Macmillanから出版した。出版に関わる編集作業、国際共同研究者である執筆者との話し合い等を行った。各セクションでの分析は以下の通りである。 小説セクション(田尻):上記の論文集において、'Everyday Life and Catastrophe in Samuel Beckett'という章を書き、1950年代のベケットの『エンドゲーム』のような作品において核戦争の脅威と日常生活の関係がどのようなものであったかを探究した。通俗的な想像力が核の脅威にさらされた日常生活の貴重さを強調するのに対し、ベケットは日常生活があらかじめ空洞化していることを表象しているという方向性で議論を展開した。 演劇セクション(堀):上記の論文集において、神学者キャサリン・ケラーが定義するFeminist Counter-apocalypseという概念を用いて、ベケットの『カタストロフィ』を読み直す作業を行った。権力者Directorに対し、非権力者であるAssistant、Protagonist、照明係が権力に抵抗し、互いに協働しあうさまは、アナ・チンが定義するところのprecarityに匹敵する。それは、流動性、不確定性に依拠するもので、前進や成長に執着する伝統的白人男性中心主義に抗う新たな視点を提供している。 思想セクション(対馬):上記の論文集において、'Beckett’s Grey and the Temporality of Afterness’という章を執筆した。ベケット作品における「灰色」とカタストロフィの事後性の関係に着目し考察を進めた。その際、パウル・クレーの「灰色」についての考察やジャン=リュック・ナンシーの「あとで」の時間性についての議論を参照した。
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Research Products
(6 results)