2019 Fiscal Year Research-status Report
テレサ・ハッキョン・チャ研究―インターメディアルな文学とトランスナショナルな記憶
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19K00443
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
井上 間従文 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 准教授 (50511630)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ詩 / 映画研究 / ジェンダー研究 / フェミニスト映画理論 / 1960年代 / トランスナショナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は主にテレサ・ハッキョン・チャの文学・映像創作における映画理論の位相を明確化するための基礎的調査を行った。特にチャの教師でもあり、UCバークレー校にて映画研究を制度化することに大きく貢献した在米研究者の方々とのメールインタビューを数回に分けて実施し、1960年代以降のアメリカ西海岸におけるフェミニズム理論と運動、大学における政治と言説、フランス映画理論の受容などに関する貴重な資料を収集することとなった。 並行して、主に英語圏の研究者とも共同研究の基盤を整備する作業を行い、その一環としてイギリスの学術出版社より刊行されるアメリカ詩研究のアンソロジーに、チャの詩的テクストに関する論考を寄稿することとなった。チャの詩的テクストはイメージや文字の配列において映画スクリーンを深く意識したものとなっているため、この論文を執筆することで、来年度以降に行う予定のチャにおける映像と文学の相互作用をめぐる研究を進めるための足がかりが得られた。 その他、海外の研究者との研究ネットワークを維持しながら共同研究を定期的に行った。チャの作品に特化した研究グループを組織し、アメリカとフランスでそれぞれ研究する美術史研究者各1名と研究代表者との計3名でのディスカッションを継続的に行った。またアメリカの映画研究におけるプラグマティズムの役割についても海外研究者との研究グループを立ち上げ、アルゼンチンとオーストラリア在住の研究者2名に本研究者を加えた3名での定期的な意見交換を行って来ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
成果発表の面では、論文の刊行などが問題なく進められている。またテレビ電話と電子メールを介した海外の共同研究者たちとの意見交換からも予定以上の成果が得られている。 一方で、アーカイブ資料調査等の現地調査の面では新型コロナウィルス感染症の影響で、予定していたバークレーでの美術館訪問と調査を延期せざるをえなかった。次年度である2020-2021年度内の実施を目指して現在関係各所と調整中である。同様に海外学会発表も当初予定していたものが今年度は中止、あるいは2021年に延期になるものがあり若干の影響が出ている。以上、現地訪問を必要とする仕事の面でやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に行った基礎調査の成果に基づいて、チャと1970年代アメリカ西海岸における映画研究の進展をめぐる体型的な資料調査、聞取り、さらにはそれらの読解を行う。より具体的にはWomen & Film (1972), Camera Obscura (1975), Discourse (1979)といった雑誌の発刊時の研究と政治をめぐる資料調査および、それらに関わった当時の研究者たちへの聞取り調査である。 研究成果公表に関しては、チャにおける文学と映画・映像との交差点に関する英語単著の原稿をまとめる作業に着手する。また「概要」でも記したチャに関する研究ネットワークでの共同研究等の成果をアメリカの学会にて共同パネルとして発表する。その他、映画理論、文学理論に関する国際学会に参加し本研究の方法論に関する発表を行う。
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Causes of Carryover |
3月に予定していたバークレーでのアーカイブ調査および聞取り調査が中止となり、次年度に延期して実施することとなったために、主にその金額が次年度使用額となった。
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