2020 Fiscal Year Research-status Report
米国社会を作る二つの「力」:「弱き者」の声が語る物語
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19K00444
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
久保 拓也 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (80303246)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / ジェンダー学 / 障害学 / マーク・トウェイン研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
マーク・トウェインという作家と「失敗」には強い結びつきが見られる。この作家は度重なる経済的な失敗に見舞われたことがつとに知られるが、両者の結びつきはその点のみではなく多岐にわたる。この「典型的なアメリカ人作家」と「失敗」や「失敗者」との多面的な結びつきを分析することで、アメリカ社会におけるそれらが果たした役割の重要性を明確にする。アメリカ人を動かすものが宗教に根ざした「強い義務感」であることは度々指摘されるが、やはりアメリカ人的な特質である「挑戦」が必ず「失敗」と表裏一体で存在していることを考慮すると、あたかも「失敗する義務」が存在するかのようである。そこから抜け出すための様々な試みの失敗を描くことが、この作家の文学において重要性を持っていることが明らかとなってきている。 2020年度は2019年度に海外の図書館で収集した一次資料の精査に集中した。今年は海外はもとより国内においても移動が制限された。それにより残念ながら現地での取材を全く行うことができなかった。オンラインでの利用により入手が可能となる資料は従来とは大幅に増えているものの、本研究に必要となる資料はアメリカの大学図書館が持つ貴重書庫に保存され、基本的に現地を訪問して閲覧することでしか利用できないものが多い。これまでは補助金を有効に使用することにより、必要に応じてアメリカの大学図書館を訪れて資料を入手することができていた。研究のためにさらに必要な資料は明らかとなっているのだが、そのような活動の再開時期は予見できない状況が続いている。だが、これまでにアメリカの大学を訪れて入手した19世紀アメリカにおける男性性に関連する歴史的な資料や男性性の喪失と男性の身体の関連の記録、またそれらの当時から現在に至るまでの文学作品における表象などの精査を進めることで研究を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究進捗には若干の遅れを発生させてしまっている。上記のように研究自体に進展は見られるのだが、成果の発表についての遅延が懸念の材料となっている。本来であれば2021年の8月に米国で開催されるはずだった国際学会(マーク・トウェイン研究の最新成果が競われる[The Ninth International Conference on the State of Mark Twain Studies])に応募するための論文を準備したが、感染症の世界的流行の影響により、学会開催が一年間の延期となってしまった。現在は来年度の同学会に応募し、採択されることを目標とすることに加え、当研究を発表するために適切な他の国際学会への応募を検討している。また研究論文の発表について、掲載されるように努力を重ねている。
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Strategy for Future Research Activity |
外国への出張が安全と思われるようになり次第、できるだけ早い時期にカリフォルニア大学を訪れ、資料の閲覧と分析を再開するとともに、現在難しくなっている現地の研究者との研究協力を再開したい。成果の発表としては、上に記したように国際学会での発表の機会を積極的に探るとともに、研究論文についても掲載されるように引き続き努力を重ねてゆく。現時点において既に、補助金をより有益な形で使用させていただくために一年間の研究期間延長を視野にいれているが、これ以上の遅延がでないように引き続き努力を続けてゆく。今年度は、これまでの文献や資料を基に最終的な成果を発表できるように準備を進めるとともに、未邦訳のマーク・トウェイン作品の翻訳を研究完成年度には出版できるように準備している。
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Causes of Carryover |
資料収集や研究打合せの為の国外旅費を使用できなかったことが大きく影響しました。今年度は国内外の旅行が可能になり次第、現地でなければ利用の難しい資料の閲覧等のために旅費として補助金を計画通り積極的に利用させていただこうと考えております。
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