2021 Fiscal Year Annual Research Report
オブジェクティヴィズムの機能:アメリカ詩人パーマーの作品における「対話」の分析
Project/Area Number |
19K00445
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山内 功一郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20313918)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 現代詩 / アメリカ詩 / アメリカ現代詩 / アメリカ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画期間の最終年度にあたる2021年度には、学会誌『シルフェ』に査読付きの論文「「押韻のフィールド」へ向かって――パウンドからダンカンを経てパーマーへ」を発表した。副題に示している通り、これはアメリカン・モダニズムを代表する詩人エズラ・パウンド、その次世代の詩人ロバート・ダンカン、さらに本研究課題の対象となっているマイケル・パーマーの三詩人を取り上げ、いわゆるパウンド・トラディションにおいてパウンドの詩作法がどのように更新され、「オブジェクティヴィズム的な詩作」が展開されることになったかを明らかにした論文である。この研究成果によって、特に後続世代の詩人としてパーマーが、パウンドの教え「母音の音調の導き」に潜む可能性を拡大し、古今東西の様々な詩人たちの声が反響する対話空間を見出したことが解明された。この点において、この論文は本研究課題の成果を具体化し総括したと言える。 また今年度の主要な成果としては、日本アメリカ文学会東京支部例会の全体会で行った研究発表「エズヴァーシティの内から/外から――パウンド、ダンカン、へジニアン、パーマーを読む 」も挙げることができる。この発表では詩作法を伝授する教育者としてのパウンドが、後続世代の詩人たちに与えた影響を明らかにした。特に詩作法を示す一種の装置としてパウンドの長編詩『詩篇』を捉え、その具体的な特徴を「詩篇1」の分析を通して示した成果は、後続世代の詩人パーマーの作品を解釈するうえでも極めて有益な視点を確立することになった。 なおこの年度には、パーマーの最新詩集『シスター・サタンに捧げるささやかなエレジー』(2021)所収の連作「ミッドナイツ」を訳編し、詳細な解説と共に『現代詩手帖』に発表した。 総じて2021年度には、主に学術論文と研究発表によって、当初の予定通り本研究課題の成果を公にすることができた。
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