2022 Fiscal Year Annual Research Report
Literature of Sensibility formed by media with a focus on late eighteenth-century women poets
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19K00449
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
田久保 浩 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 教授 (20367296)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 18世紀 / イギリス文学 / フランス革命 / 女性作家 / メディア / ロマン派 / sensibility |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はイギリスのイデオロギー転換期である1790年代の女性作家による政治的自由と女性の権利をめぐる言説について、当時のメディア状況に注目しつつ検証するものである。前年度に引き続いて2022年度も、ヘレン・マライア・ウィリアムズについて研究を進め、2巻本A Tour in Switzerlandに焦点を当て、イギリス・ロマン派文学の中心的概念である想像力についての理解をめぐって、彼女のラモン・ドカルボニエールの翻訳、ウィリアム・コックス、ワーズワース、パーシー・シェリーとの比較を行い、この研究について5月にテキサス州、ベイラー大学でのBritish Women Writers Conference 第30回大会で発表した。ウィリアムズの旅行記の直前に書かれたワーズワースのDescriptive Sketchesとの比較分析を含めた英文による論文の執筆が現在も進行中である。4年間の研究期間において、1790年代の言論抑圧の状況、それに対して、メアリー・ロビンソンやヘレン・ウィリアムズら、自由の主題を掲げ、それを書き続けた女性作家たちについて、当時の文化状況を見据えた研究を行った。その成果として明らかになったことは、感受性の思潮、想像力の理想、および人間と社会についての思想の深さやその表現において、これら女性作家たちはロマン派の主要作家たちに引けを取らない重要な作品を残し、後代に大きな影響を残していることである。「女性作家」としてロマン派の文学に付随するものとして扱うことが、不適切であり、ロマン派の時代の文学として一体のものとして研究すべきものであるということである。これら女性作家は1790年代から1800年代にかけてのイギリス社会の保守化、思想抑圧により、性役割が固定されてゆくなかで、見過ごされてゆくようになったわけだが、その過程についてさらに研究を進める必要がある。
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