2020 Fiscal Year Research-status Report
History of American Sentimental/Domestic Novels
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19K00452
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
田邉 千景 学習院大学, 文学部, 教授 (10316812)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトの意義は、ルイザ・メイ・オルコットとヘンリー・ジェイムズの影響関係を分析することで、アメリカ感傷/家庭小説がアメリカ近代リアリズム小説の形成に与えた影響を明らかにすることである。 初年度はおもにジェイムズの初期作品を通じて感傷小説的傾向を分析したので、当該年度はジェイムズのオルコットを含む作家に関する感傷小説批評を分析した。ジェイムズは女性作家による感傷小説の主人公の心理描写のリアリズムが不十分であると考えていることがわかった。一方、ジェイムズ自身は女性を主人公に据えながら、男性の語り手の視点によって主人公の心理を外面的な表象によってのみ描くというスタイルを採用することによって、男性が女性を他者化する家父長制の社会構造を小説構造に反映していたことを考察した。 当該年度はそのようなジェイムズの語りの構造から、ネラ・ラーセンの『パッシング』を読み直す論考を発表した。ラーセンはオルコットとは人種も時代的背景も異なるが、20世紀の家庭小説ともいえる本作の中で、極めてジェイムズ的曖昧性を利用しながら女性の心理描写のリアリズムを描いた作家である。その分析に、ジェイムズの作品構造を利用することによって、近代リアリズム小説の形成における家庭小説およびその女性主人公の果たす役割や、小説の視点という技巧の問題などが明確になった。 当該年度は新型コロナによる海外渡航規制のため、予定していたハーバード大学図書館およびコンコードやボストンの公立図書館における未刊行のオルコット関連の資料収集および調査を進めることができなかったため、次年度の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナによる海外渡航規制のため、目的としていた資料収集が果たせなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
いまだ海外渡航による資料収集の目処が立たないため、当面は出版されているオルコットおよびジェイムズの資料を分析する。今年度後半に渡航可能となれば新しい資料の調査・収集も並行して行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため訪問予定であった文書館や図書館が閉館となり、米国における資料調査ができなかったため。
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