2022 Fiscal Year Research-status Report
Transfiguration of Jacobean Kingship and Mythological Emblems
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19K00456
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
松田 美作子 成城大学, 文芸学部, 教授 (10407611)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エンブレム / ジェームズ一世 / シェイクスピア / 宮廷仮面劇 / 宗教文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年に引き続き、研究のテーマであるジェームズ一世時代の宗教文化と王権表象について、エンブレムブックを中心とした一次資料や、参考文献の収集と分析を主におこなった。それは、ジェームズ一世をパトロンとしたシェイクスピア所属の国王一座によるいわゆるロマンス劇を、それらのエンブレム表象から考察し、研究テーマを追求するためであった。とくにシェイクスピアとジョージ・ウィルキンズ共作『ぺリクリーズ』(1609年)に登場するインプレーサ、劇中に登場するダイアナ女神、ペリクリーズの娘、マリーナが売春宿でおこなうピューリタン的説教といった当時の視覚文化や宗教文化との関わりの深い要素に注目した。イニゴー・ジョーンズによる遠近法を駆使した舞台構成やベン・ジョンソンを中心とした宮廷仮面劇の興隆は、シェイクスピアの作劇にも当然影響を及ぼしているはずで、当時の仮面劇に多く登場する神話神の象徴的な描写や、リーパを参考にした衣装などは、シェイクスピア劇の象徴的表現を分析するときに有益である。そうした表現は、ジェームズ王を寿ぐためのものであり、それはピーチャムが王にエンブレム写本を捧げたこととも通じている。 また、文献の収集の過程で、イギリス・ノーフォーク州ブリッキング・ギャラリーの天井画が、ヘンリー・ピーチャムのエンブレムを下敷きにしていることを見出した。エンブレム研究は、机上の分析と解釈とともに、実物として物質文化において現存するこのような作例を調査することの両面が重要である。次年度、渡英して、このギャラリーを調査するとともに、さらにほかの作例を探して、考察を深める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年同様、新型コロナウィルスのパンデミックによって、海外での調査を見送ることとなったため、大英図書館所蔵のエンブレム写本を閲覧して調査を進めることができなかったが、その分、ネット検索も含めて、文献の収集は十分におこなえた。実地調査が行えなかったことで、やや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスのパンデミックによるさまざまな制限が緩和され、今後、海外での実地調査をおこなうことが可能であると思う。そこで、上記したように、大英図書館でのエンブレム写本の調査や、イギリス・ノーフォーク州のギャラリーを訪問して、エンブレムの応用表現の調査をおこない、研究テーマであるジェームズ朝における王権表象を追求する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスのパンデミックによるさまざまな制限によって、海外調査ができなかったため。
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