2019 Fiscal Year Research-status Report
Jack B. Yeats and Vernacular Culture: Representation of Popular Entertainment Cultural Activities
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19K00457
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
三木 菜緒美 (服部菜緒美) 帝京大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (20461535)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Jack B. Yeats / アイルランド文化 / 娯楽文化研究 / ヴァナキュラー文化 / アイルランド文学 / ブロードサイド・バラッド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アイルランドの画家であり作家でもある Jack B. Yeats 制作の風刺漫画やブロードサイド、絵画、演劇、小説などを対象とし、19世紀から20世紀前半のイングランド及びアイルランドにおけるヴァナキュラー文化としての大衆娯楽文化(特にバラッド文化やサーカス、スポーツ、風刺演劇など)がどのように表象されているか、社会的・歴史的・文化的コンテクストと照らし合わせてどのような意義を見出せるかを分析し考察・検証するものである。 2019年度は、ジャック制作の月刊ブロードサイドであるイラスト付きブロードサイド・バラッド・コレクション (1902-03年に Elkin Mathews より出版した A Broad Sheet; 1908-15年に Cuala Press より出版した A Broadside) 9年分に焦点を当て、掲載されているバラッドとイラスト作品を整理・分析し、ジャックのこの制作活動をクアラ・プレス設立やアイルランドのアーツ・アンド・クラフツ運動との関連で考察し、論文として発表した。 また学会発表では、このジャックの活動と1935年及び1937年に彼の兄W.B.Y.が中心となって復活させたブロードサイド (A Broadside) との違いを分析し、ジャックが民衆文化とアイルランドの労働者たちの生活の表象に力を注いでいたのに対し、兄W.B.Y.は詩における音楽性の復活を意図して制作していたという違いがあることを明らかにした。 今年度の助成金は、主に文献購入、学会発表、海外調査(アイルランド国立美術館内イェイツ・アーカイブ)に充てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、1) ジャック制作のイラスト付きブロードサイド・バラッド・コレクション9年分を整理し、論文にまとめて発表すること、2) アイルランド国立美術館内イェイツ・アーカイブを訪れ、ジャック関連の一次資料の収集を行うことを、研究計画にあげていたが、どちらも計画通りに実施することができた。 またこれら以外にも、ジャックの兄W.B.Y.が主導したブロードサイド・プロジェクトとの比較を行い、2019年10月に日本イェイツ協会にて学会発表を行うことができた。 以上の理由により、現在までの進捗状況は概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響により、今年度は海外調査が難航するものと予想されるため、2020年度は、当初の計画を変更し、国内にてできる研究を先に進めていく。具体的には、1) 昨年度2月に収集してきた膨大な第一次資料を分析することと、2) これまでに集めてきたジャックの演劇・小説などの文学作品を読み進め、大衆娯楽文化がジャック作品の中でどのように扱われているかを分析・考察することとする。そしてこれらを10月に予定されている IASIL JAPAN 学会 (The Japan Branch of the International Association for the Study of Irish Literatures) にて発表し、その後、論文として出版することを目指す。また、19世紀から20世紀前半にかけてのアイルランドにおけるサーカスやクラウンショー、ハーレクイン、ベアナックル・ボクシング、競馬など、定期市で開催されていた娯楽に関する歴史資料の収集を継続して行っていく。
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Causes of Carryover |
3月開催予定であった学会が、新型コロナウィルスの影響で中止となったため、その旅費の一部として使用できず、次年度使用額が生じてしまった。これは、翌2020年度に研究図書の購入費として使用することとする。
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