2022 Fiscal Year Research-status Report
トニ・モリスンの他者表象を通して見る不寛容な時代の文学・文化研究
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19K00458
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
森 あおい 明治学院大学, 国際学部, 教授 (50299286)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トニ・モリスン / 人種 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究4年目となる2022年度は、研究課題である「トニ・モリスンの他者表象を通して見る不寛容な時代の文学・文化研究」の最終年度となるはずであった。しかしながら、2022年度も新型コロナウィルス感染症の影響で、海外の大学、研究機関での調査、また学会発表を行うことはできなかった。研究対象であるプリンスストン大学ファイアストン図書館所蔵のトニ・モリスン・ペーパーズの調査ができなかったことは、研究を進める上で大きな障壁となった。 その一方でコロナ禍ではありながら、国内の学会には対面での参加が可能となり、研究を進める上でのインセンティヴとなった。日本アメリカ文学会第61回全国大会におけるワークショップをはじめとして3つの学会で研究発表を行い、本研究テーマである「トニ・モリスンの他者表象」に関する研究を進めることができた。研究成果の詳細については、【現在までの進捗状況】を参照されたい。 今年度は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行されることが決定し、海外での調査研究がようやく可能になる見込みである。夏休みを利用してプリンストン大学ファイアストン図書館でリサーチを再開する予定である。さに研究テーマに関連した他者表象とアートの関係を調査するために、ニューヨークやワシントンDCのアフリカ系アメリカ人アートの蒐集で知られる美術館でのリサーチを実施したい。最終的にはこれらの調査・研究を踏まえて、学会発表や研究論文執筆の準備を進めたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続きコロナウィルス感染症拡大の影響もあり、研究の予定が大幅に変更となった。夏休みに予定していたプリンストン大学での研究調査は前年度に引き続き中止を余儀なくされた。その一方で、日本国内での学会が、少しずつオンラインばかりでなく対面で実施されるようになり、他の研究者と意見交換を行う機会も増えてきた。 2022年度は、国内で開催された以下の3つの学会で研究発表を行った。まず、4月23日にオンラインで開催された第38回日本アメリカ文学会中部支部大会において、「文学・アートを通して語り続けるトニ・モリスン」というタイトルで発表を行った。その報告書は、『中部アメリカ文学』第26号(2023年3月発行)に収められている。 10月9日に開催された日本アメリカ文学会第61回全国大会(専修大学神田キャンパス)においては、「トニ・モリスン再読――分断の時代のレジリエンス」をテーマにワークショップを企画し、所属する黒人研究学会の有志3名とともに研究発表を行った。その英文要旨は、同学会の会誌The Journal of the American Literature of Japan NO. 21 (2023)に掲載されている。また、より詳細な報告書が『黒人研究』(2023年3月発行)に収録されている。 12月10日に開催された第1回大阪公立大学英文学会英文学会における「シンポジウム:トニ・モリソン文学の魅力―その歴史と技法」では、「トニ・モリスンの作品に見る解放のアート」というテーマで発表を行った。これらの発表では、これまで周縁化されて白人中心的な歴史には記録されてこなかった「他者」の存在を可視化するモリスン文学の意義を検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究着手時には、当該研究最終年度に研究の総括として所属する黒人研究学会等で、海外のモリスン研究者を招聘して、シンポジウムを開催し、意見交換を行う予定でいたが、残念ながら研究の途にあり実現していない。しかし、幸いなことに研究期間を1年延長することが認められたので、当初の予定とは多少異なるが、改めて研究の総括に注力したいと考えている。 今年5月8日に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行されることにより、海外への渡航に制限がなくなり、従来計画していたアメリカでの調査や学会発表が可能になる。夏休み中には、4年ぶりでプリンストン大学図書館を訪れ中断していたモリスン・ペーパーズの調査を行い、他者表象に関連する資料調査を再開したいと考えている。また、10月には、トニ・モリスンのノーベル賞受賞30周年を記念するシンポジウムがトニ・モリスン学会主催でアメリカで開催される予定である。詳細については、5月末に発表される予定であるが、これまでの研究成果を踏まえて"Call for papers"に応募できるように今から準備を進めていく予定である。 また国内の学会での発表も視野に入れて論文を執筆し、研究成果の公表ができるように準備を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度は、プリンストン大学図書館での調査、また所属するModern Language Association等の学会での研究発表のための渡航を計画していたが、コロナ禍で海外渡航に制限があったため、断念した。したがって計上していた外国旅費を使うことができなかった。また国内でも地方で対面で開催される学会は開は少なく、外国・国内ともに旅費を次年度に繰り越すこととなった。
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