2022 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ詩「沈滞」期の詩人たち─アメリカン・ルネサンスとモダニズムの間隙再構築
Project/Area Number |
19K00459
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
澤入 要仁 立教大学, 文学部, 教授 (20261539)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 米西戦争 / アメリカ詩 / Moody, William Vaughn / Crosby, Ernest |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、モダニズム詩出現の直前にあたる米西戦争 (1898) 前後を探った。米西戦争というと、しばしばマーク・トウェインが論じられる。たしかにそのエッセイ“To the Person Sitting in Darkness”ではアメリカの介入を批判していた。けれども本研究ではトウェインに劣らず勇猛な声をあげていた詩人を見いだした。 たとえばWilliam Vaughn Moodyだ。その詩“An Ode in Time of Hesitation”では、南北戦争で黒人部隊を率いたRobert Gould Shawの記念碑を前にして、南北戦争と米西戦争を対比させることによって「自己軽蔑」の「怒りと痛み」を歌っていた。それはストレートな痛罵ではないぶん荘重な声になっていた。また詩“On a Soldier Fallen in the Philippines”では、フィリピンで斃れたた米兵の名誉を求め、そうすることによって帝国主義の非を鳴らした。 Ernest Crosbyも見いだされた。現在では言及されない詩人だが、生前、トウェインと並ぶ反帝国主義文学者とされていた。その詩は荒々しさが特徴だ。たとえば詩“The New Freedom”では、ホイットマン詩のごとく長い行からなる自由詩型を使って、独立革命期とはちがう新しい圧制者を「汝の魂の中に探せ」と求めていた。詩“The Real ‘White Man’s Burden’”では、米国によるフィリピン「文明化」を正当化した、英国ラドヤード・キプリングの詩“White Man’s Burden”をもじることによって帝国主義者たちを面罵していた。そこでは「息子たちを外地へ送り、(現地民)の求めに応えさせよ」と歌ったキプリングに対し、外地へ送る若者に「聖書と砲弾とジン」を持たせよと述べていた。 これらの詩にモダニズムの兆しを見いだすことは難しい。けれども詩に対する信頼や期待が、本研究のいう「沈滞」期になっても依然として大きかったことは明らかになった。それが新しい詩の運動を引き起こす力のひとつになったと思われる。
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