2022 Fiscal Year Research-status Report
State-of-the-Nation Plays and British Theatre in the 1970s
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19K00463
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
川島 健 同志社大学, 文学部, 教授 (60409729)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イギリス演劇 / 1970年代 / 国家 / 国民 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は『英国若者文学論――国家が拡張をあきらめたとき、 若者はどのように大人になっていくのか』 (全346頁)を出版した。その後半部、171-317頁は、本研究に関OsborneのLook Back in Angerにおける男性性の表象とArnold WesterのRootsにおける母娘関係の表象を分析した。このような家庭の描出が、国家を論じるという要請を受け、どのようにバージョンアップしていくのかを論じた。 Harold Pinterの劇作を論じた英語論文をすでに仕上げてある。これは福祉国家体制下における主婦の役割を戯画的に描いたPinterの戯曲を、ジェンダー的なアプローチで分析したものである。この論文は国際的な学術雑誌に投稿する準備をしている最中である。 また、J. B. PriestleyのAn Inspector Callsの上演に関する日本語論文を執筆している最中である。戦後まもなく上演されたこの戯曲は、階級的連帯の重要性を訴えている。この戯曲は1940年代から90年代にかけて、翻案されながら上演を繰り返している。それぞれの上演がその時代における、社会観、国家観を反映している。拙論では、これら翻案上演の変遷をたどり、この作品が持っている可能性と限界を分析するとともに、戦後イギリス演劇界の傾向と諸々の問題点を浮かび上がらせる。この論文は大学の紀要に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍が長引き、授業等の公務が肥大化し、研究に割く時間が大幅に減ってしまったのが第一の要因である。また、あてにしていた海外出張がいけなくなってしまったこともおおきい。研究成果発表の場を変更しなければならず、進捗がやや遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍も落ち着き、大学の運営も平時に戻りつつある。研究のペースを以前のように安定的な様態に戻すことをまず先決にしたい。以前は、海外での国際学会での発表を目指していたが、路線を変更する。これまでの本研究課題の関連で発表した論文、論考をまとめ、単著として発表したい。
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Causes of Carryover |
2022年度も引き続きコロナ禍の混乱により、学務が肥大化し研究時間が十分に取れなかったことと、また、海外渡航が制限されるなか、資料調査ができなくなっただけでなく、発表の場も限定されたため、研究の進捗が滞ってしまった。そのため、研究計画に狂いが生じ、次年度使用額が生じてしまった。23年度にはこれまでの研究成果をまとめ、発表をするために、英語論文を執筆する予定である。そのための資料購入と、英語校正のためにこれらの資金を使いたい。
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