2019 Fiscal Year Research-status Report
ヌーヴォー・ロマン以降の現代フランス文学史の構築--小説、詩、批評を中心に
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19K00465
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑田 光平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80570639)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フランス語現代文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主にフランス語を母国語としない「エクソフォニー」の作家サンティアーゴ・アミゴレーナとローラ(ラウラ)・アルコーバの作品読解、2019年度の文学賞受賞作品の読解と分析、フランス現代詩の読解、歴史フィクション作品に関する研究が進められた。 コロナウイルス感染拡大の影響から海外出張をキャンセルせざるをえず、フランス語圏作家へのインタビューがかなわなかったが、その分、作品読解を進めることができた。現代フランス語文学の傾向として、歴史をフィクションの枠組みにおいて読みかえる(レオノラ・ミラノ、ローラン・ビネ)、あるいは、通常知られている歴史とは異なるパースペクティヴを提示する作品(アミゴレーナ、カメル・ダーウド)、グローバル社会におけるアイデンティティや実存に関する不安を主題とする作品(ジャン=ポール・デュボワ)、人間と環境との関係を問い直す作品(シルヴァン・テッソン)などが挙げられる。これらの特徴をより理論的にとらえるため、イヴァン・ジャブロンカ、エミリー・アプターらの新しい文学理論に取り組んだ。 ジャブロンカは「探索」としての歴史を現代文学とみなし、通常のフィクション/ノンフィクション、あるいはフィクション/現実にもとづくもの、という二項対立ではとらえきれない、人間行為を理解する営みとしての歴史学=文学というパースペクティヴを提案した。これは歴史フィクションの分析にとって有効なパースペクティブだといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンティアゴ・アミゴレーナ、ローラ(ラウラ)・アルコバの著作の読解が進み、ジェラール・マセの著作の翻訳を刊行し、現代詩人ジャック・デュパンについて論文を書き、今年度のフランス文学賞に関する短い報告記事を二つの媒体に発表することができた(うち一つは来年度刊行)。世界的なコロナウイルス感染拡大の影響で、急遽出張をキャンセルせざるをえなかったが作品読解は進めることができ、その成果をいくらかまとめることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルスの影響でフランス語圏への出張が難しく、また、作家・研究者の日本への招聘もさしあたりは不可能な状況であるが、2020年の10月末から11月に別予算で来日予定の三人の海外研究協力者を招聘予定であるので、彼らとの共同研究シンポジウムを計画している。 文献読解について引き続き継続していくが、スタンダール・グルノーブル第三大学のリダ・ブーラービ氏との連携のもと、とりわけモロッコを中心としたマグレブ文学の読解を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大の影響のため海外出張がキャンセルとなったため。次年度、コロナウイルスの状況にもよるが、渡航可能な場合は、フランス・モロッコでの調査と作家インタビューなどを行う予定である。
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[Book] つれづれ草2019
Author(s)
ジェラール・マセ
Total Pages
290
Publisher
水声社
ISBN
978-4801003682