2022 Fiscal Year Annual Research Report
ヌーヴォー・ロマン以降の現代フランス文学史の構築--小説、詩、批評を中心に
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19K00465
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑田 光平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80570639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
カペル マチュー 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (70896414) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 現代フランス語圏文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である2022年は、サバティカル期間ということもあり、フランスならびにフランス語圏アフリカ諸国(コンゴ共和国、セネガル、モロッコ)にまとまった期間、滞在し、エムロード・クカ、アブデルガニ・フェナンヌ、リム・バタル、アラン・マバンクら現代作家たちへのインタビューを行うことができた。彼らへのインタビューから、ヨーロッパ対アフリカ、あるいは旧宗主国対旧植民地という図式では捉えきれない(もちろんそれらは相変わず無視できない図式ではあるが)、グローバリズムの時代に特有のダイナミックな文学作品、芸術作品が生まれていることが明らかになった。彼らの作品は、フランス文学から大きな影響を当然のごとく受けていると同時に、それらをパロディのようにして使いながら、それぞれの地域の問題を非常に現代的な視点から扱っている。たんなる土着主義・地域主義でも、たんなるヨーロッパへの抵抗でもない、ハイブリッドで新しい作品が作られていることがよく理解できた。こうした新しい動向について、研究成果として学術雑誌や商業誌等で紹介を行った。 研究期間全体を通しての成果としては、当初の目的であった現代フランス語圏文学史の構築というまでには至らなかったものの、1980年代以降のフランス語圏文学史の大きな見取り図は得ることができた。ヌーヴォー・ロマン的な前衛作品からの継承、外国語としてのフランス語を駆使しながら出身国の歴史や個人史を描くエクソフォニー(母国語の外にでた状態)の作家の作品群、歴史をフィクション化することで読み替える新しい歴史小説(アフリカ諸国の作家たちによる世界の勢力図を読み替える新しいポスト植民地主義文学も含む)、マイノリティであることの日常を淡々と描く伝記的フィクションなどが、大きな傾向として挙げられる。こうした見取り図のもと、今後より精緻な現代フランス語圏文学史の構築をめざして研究を続けていきたい。
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